ハルタさんとイゾウさんはアキから報告を受けて様子を見に来てくれた…というか状況を聞き出しに来たようだった。
うう…私だって吐き出した方が楽になるかもしれないけど…何だろう、このちょっと損してるような感じ…。

「サッチとフィルが喧嘩なんてすると思わなかったからねー。珍しいことってやっぱり見たいじゃない。」
「喧嘩じゃないです…それに見せ物じゃないです…」

やっぱり楽しんでた…!
周りから見たら喧嘩になるのかなあ…私が拗ねてしまったというか、変な意地をはってしまったというか…私が一方的にしちゃったことだから喧嘩とは違うと思うんだけど…。

「ごめんごめん。もう着くよ、どこ停めようか。」
「えっと……、!!だ、だめです!出てください!」
「え?」
「早く!お願いします!」

ばっと身を屈めながらハルタさんにお願いをした。
ハルタさんも含めみんな不思議そうにしていたけど、私の言い方もあってか車はマンションの敷地から出てそのまま走行を続ける。
ほっとして体を起こすと、当然のことながら私に向けられる疑問の目。

「一体どうしたんだ。」
「…サッチさんがいました。多分そうです…。」

ハルタさんに指示しようと思って見たら、いつもの場所にはすでに車が停まっていたのだ。
あそこは私の部屋に割り当てられた場所だし、何度も見ているからわかる。
あの車は絶対サッチさんのものだ。

「あー…連絡取れないから帰ってくるの待ってたんだ。」
「どうする?強行突破する?」
「……」

出来なくもないけど…もし車の中じゃなくて部屋の前で待っていたら?
会いたくないわけじゃないけど…今会うのはとても気まずいし、まず会う勇気がない。
何も返せない私を見たハルタさんは、ふうとため息をひとつついた。

「しょうがないね、避難所に行こっか。」
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