あれから三日後。
病院に行き医者から「もっと早く来い」と説教を受け、薬も処方してもらったおかげで、体調はあっという間に回復した。
そう、体調は。

「……まずい。」

携帯のとある画面、とあるメール。
何度見ても感じる危機感、そして焦り。
おれは体調と引き替えにとても、とてつもなく大切なものを失ってしまったのだ。

「どうした?何食ったんだ?」
「ちがう。」
「まだ体調悪いの?病院で薬もらったんでしょ?」
「もらったけどそうじゃねえ。」
「じゃあどうした。」

ああ…お前らは呑気でいいな。
おれはこんなにも悩み、苦しみ、絶望し、そして焦っているというのに。

「…フィルちゃんが日曜に見舞に来てくれたんだよ。お前らが教えてくれたっつってな。けどその時具合が良くなくてよ、少し強引に帰したんだ。で、病院行って体調戻ったから見舞いのことも含めてメールしたんだが……何て返ってきたと思う?」

見舞いへの感謝と謝罪、そして体調が戻ったという報告と次のデートはおれおすすめの店にお茶をしに行こうということ。
それらを文にして送ったわけだが、フィルちゃんから返ってきた返事は…。

『そうですか。良かったですね。』

「わかるか!?あのフィルちゃんがこれ送ってきたんだぞ!?いつもおれを気遣ってくれてめちゃくちゃ優しくてかわいい文を送ってくれるフィルちゃんが『そうですか良かったですね』!?普段なら絶対ありえねえんだよ!デートのことにも一切触れてくれねえし!電話なんて着信拒否されてんだぞ!?ああ…絶対フィルちゃん怒ってる、絶対嫌われた、もう生きてけねえ…」
「「「ざまあ。」」」
「こ い つ ら……っ!!」

こいつらがフィルちゃんにおれが風邪をひいたことを言わなければ、こんなことにはならなかったんだ。
そもそもおれがさっさと病院に行かなかったせいなのだが…いや、こいつらも悪い、絶対悪い。

「じゃあサッチは今フィルから絶交されてるってことか。」
「……エース君、その言葉はとても傷つく。もう少しオブラートに包んでくれたまえ。」
「どうするんだ?お前からは連絡とれねえんだろ?まあ面白いからもう少しこのままでもいいけどな。」
「イゾウ…お前は地獄に落ちろ。なあハルタ、アキちゃんに連絡してフィルちゃんのこと訊いてくれねえか?」
「嫌。」
「即答!?」
「フィルのことは聞いてるけどサッチに教える義理はありませーん。もうちょっと反省したら?」

このガキ…全部終わったら絶対泣かす。
けど本当に困ったことになったぞ…おれからは一切連絡が取れねえし、あと頼れるのは…

「…マルコ、お前からフィルちゃんにそれとなーく訊いて」
「それが人にものを頼む態度かよい。」

あーそうだそうでした!こいつはこういうやつだったよ!!
人が下手に出てるのをいいことに…くそ!腹立つなあこの顔!

「もういい!店行ってくる!お前ら今日来ても何もしてやらねえからな!他のやつにも言っとくからな!」
「やることがセコいな。」
「うるせえ!」

やはりおれの味方をしてくれるのは店のやつらだけなのだ、あとオヤジ!
ずかずかと部屋をあとにしながら、仕事に気持ちを切り替えるのだった。
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