「お、青になった。この先もうちょい行ったとこにうまい店あるから今日はそこ行こっか。」
「は、はい。」

…あああおれの馬鹿野郎!!
本当ありえねえ!何やってんだよおれ!
今のそのまま行くとこだろ!?「このままつないじゃう?」とか言ってさ!最高のタイミングだったじゃねえか!
くそ、本当ありえねえ…!

「あの、サッチさん」
「何?」
「えっと…」

いや、今日は本当にやべえんだ。
何がって…フィルちゃんのかわいさが異常だ。
今日はおれのことすげえ見ようとしてくれるし、フィルちゃんから話題振ってくれるし…あとあれだ、何か…保護欲っつーの?今日のフィルちゃんはいつも以上に小動物に見えて困る。

「…天気、晴れてよかったです。」
「そうだな。雨だと行く場所限られちまうし…こういう風に歩けねえもんな。もし次雨降ってたらどうしようか。」
「え?ふ、普通はどうするものなんですか?」
「んー…まあ室内のとこ行くとかかな?映画とか。あ、家デートもありか。」

瞬間フィルちゃんがびくりと反応したのがわかって。
…お?もしかしてもう行けちゃう感じ?
まあ家ならフィルちゃんが周りの目気にすることもねえだろうしおれも存分にいちゃいちゃ…ゴホン!いや、可愛がってやれるしな、うん。
そもそも付き合って二ヶ月弱になるっつーのにまだ二回しかデートしてねえってどういうことだ?
まあ仕事が忙しいのは仕方ねえけど…それでもフィルちゃんにとってはおれが初めての男なわけだ、わかんねえことも多いだろうしそれこそたくさんかまって安心させてやりてえ。
それにおれがかわいい彼女を放っておくような酷い男だと思われても困る。
そう、本当はめちゃくちゃかまってやりてえんだ。

「する?家デート。フルコースつくってもてなすけど?」
「!え、あの、い、家は」
「くくっ。」

あー…家はまださすがにハードル高いか。
この前喫茶店で目の前座っただけでアレだったもんな…家なんか連れ込んだらフィルちゃん本当もたなくなりそうだ。
まあおれの方も手出すの我慢できる自信ねえし…うん、ゆっくりだ、ゆっくりいこう。
学園祭のときのは…あれだ、いわゆる事故ってやつ?
だってあの時はおれも浮かれてたというかフィルちゃんがかわいすぎたというか…まあつまるところ我慢できませんでした。
けど急ぐ必要なんてねえんだ、おれはフィルちゃんにとっての初めてなんだからゆっくり!焦らず!大事にいかねえとだめだ。

「あの、」
「うん?」
「…手、」

手…って、ちょっと待って?
お、おれ今ゆっくりいこうって決めたとこよ?
まさかか?まさかなのか??

「手?」
「…大きいですね、サッチさんて。」
「ああ、まあ体もでかいしな。」

今すっげえ期待したけどやっぱそうだよなー…。
まあフィルちゃんだもんな、フィルちゃんが手つなぎたいとか言うわけねえもんな。

「フィルちゃんは手小さいよな。」
「ふ、普通ですよ。サッチさんと比べたらみんな小さいです。」
「やっぱそう?」

…うん、手小さかった。
あとその…何だ、やわらけえっつーか手に収まるっつーか…まあとにかく女の子の手だった。
あー…やっぱりこういうのはおれから行く方がいいんだろうな。
まあフィルちゃんからは絶対来ねえだろうし…そもそもそこまで気がまわってねえだろうとさえ思う。
「手つなぐ?」なーんて軽いノリで言やいいんだけど…だめだ、やっぱりまだ早い気がする。
おれのペースとフィルちゃんのペースは違うしな、いつもの調子でいってたらフィルちゃん置いてっちまいそうだ。
とはいえ多少は強引にいった方がいいのか?これじゃいつまでたっても前進みそうにねえし…手つなぐくらいならさすがに許されるよな?
けどそれで引かれんのだけは嫌だしな…。

「お、見えた。」
「え?どこですか?」
「あれな、あの立て看出てるとこ。行くの久しぶりだなー。」
「楽しみです。」
「おれも。」

…さて、どうしたもんかな。
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