マルコは低血圧で朝に弱い。
本人もそれは重々承知なわけだから平日は寝坊しないようにアラームをたくさんセットして起きるんだけど、たまにその設定をミスするときがある。
私が朝ご飯を用意し終えても現れないときはそのパターンで、遅刻されても困るので私が起こさないといけなくなる。

「マルコー、起きてるー?」

階段の手すりに持たれながら二階に向かって声を出すも、返事は一向に返ってこない。
…はあ、仕方ないなあ。

「マールーコー」

たん、たん、たん。
階段を上る音に合わせて投げやりに呼んでみる。
今さらこの程度で起きるとは思っていないのでノックなしに部屋へ入ると、予想通り布団で顔が半分ほど隠れているマルコが目に入った。

「マルコ、時間。」
「ん……」
「起きなくていいの?」
「……」

あろうことかマルコはもぞりと寝返りを打って背を向けてくる。
…バナナめ、優しさで起こしに来た相手の前で気持ち良さそうに二度寝決めんじゃねえよ。
叩く、布団をひっぺ返す、怒鳴る…世の中にはいろんな起こし方があるんだけど、この人に効果的なのはあの方法。

「…『ナマエへ。お前と出会えて本当に良かった。どんなときもおれを支えてくれて感謝している。』」
「あ゛ー!やめろよい!!」
「『朝から弁当をつくってくれてありがとう。毎日の料理も栄養面に気をつかってくれるおかげで、お前と出会ってから体調をほとんど崩さなくなった。それから』」
「起きた!起きたから!!」

過去にマルコがくれた手紙を朗読するのだ。
叩いたり怒鳴ったりしないから私は体力を使わないしマルコもすぐに起きてくれるし…いいことだらけである。

「おはようマルコ。」
「…おはよう。起こしてくれるのはありがてえんだが…違う方法はねえのかよい。」
「じゃあ結婚式のときのにする?プロポーズのでもいいけど。」
「…絶対アラーム確認してから寝るよい。」
「がんばれ。」

とか言ってまた忘れるんだろうけど。
笑いながらカーテンを開けると、マルコは眉を寄せてあからさまに眩しそうな顔をした。
今日のように朝の目覚めが普段以上に良いときはその後の行動も速いので、私も少しだけ早めにお弁当を包む。
仕度が整い玄関へ立ったマルコは私と、私のお腹に挨拶をしてくれた。

「いってきます。」
「うん。いってらっしゃい。」


◇リクエスト内容◇
年上夢主で隊長さんかマルコさんお相手のお話
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