世界中で大ヒットのアニメーション映画を観てから近場を少し歩いたあと、サッチさんの家に向かうことになった。
途中スーパーにも寄って、サッチさんと一緒においしい晩ご飯づくりだ。
サッチさんと料理をするとき私は基本手伝う側なんだけど、サッチさんはいろんな知識やためになること、それから私でも簡単にできることを合間に教えてくれる。
それに料理してるときのサッチさんは格好よくて楽しそうで、何だか生き生きしてるから…そんな姿が見られるって意味でもサッチさんと一緒に料理をするのはすごく好きなんだ。

「おいしい…!!」

もちもちのマカロニとサッチさん特製のベシャメルソース。
それが焼き目のついたたっぷりのチーズと絡んで…口の中は幸せ一杯だ。
他にもブロッコリーや鶏肉、玉ねぎのスライスなどが入ったグラタンはお店で出てきてもおかしくないくらいにおいしい。

「そりゃもうおれ特製ですから。」
「今まで食べたグラタンの中で一番おいし…熱っ、」
「大丈夫?」
「は、はい、」
「ひひっ、火傷しねえようにな。」

ちょっと恥ずかしい思いもしたけど…サッチさんのつくる料理の中でまたひとつ好きなものが増えた。
お腹が満足したあとはふたりで後片付けに取りかかる。
何度かサッチさんの家にお邪魔するうちに食器の位置や物の場所もわかるようになったんだ。
片付けをしているとその合間にサッチさんが大抵飲み物を用意してくれて、リビングでそれを飲みながら話をしていたらすぐ帰る時間がきて…っていうのがいつもの流れなんだけど、今日はそうじゃなくて…

「あー…ナマエちゃん、」
「?はい。」
「そろそろ……風呂入る?」

ーー


「お、お風呂…いただきました。」

身体だけじゃなくて頭まですっかり温まってしまったお風呂の時間。
ドライヤーで髪を乾かすついでに冷風で熱を下げてからリビングへ向かうと、携帯をいじりながらくつろいでいたサッチさんがこっちを見る。

「ああ、ゆっくり入れた?」
「……はい、」
「何その間は。そんじゃおれも入ろっかな…っと、」

そう言って立ち上がったサッチさんが私の横を通り過ぎたんだけど、何を思ったのかサッチさんは突然私の肩を抱き寄せると顔を肩口にうずめてしまった。
驚きと戸惑いで声を出し損ねる私のそばで、サッチさんは私の髪を指で流しながらゆっくりと深呼吸をしている。

「おれと同じなんだよな。…すげェ良い。」

囁くような声にどくんと心臓が跳ねる。
サッチさんはそのまま私の首筋に唇を寄せてきて、それが一度だけじゃなくて何度も…それにすごく大事なものを扱うみたいに優しくするものだから、私の体は当然反応してしまって。

「ッ!…ご、ごめん、その…今日疲れたろ、先に布団入ってていいから。」

サッチさんは私の顔も見ないまま足早に部屋をあとにしてしまう。
今日は映画を観ただけで大して歩いてもいないし、あとは家にいたから疲れてないってサッチさんも分かるはずなのに。
いつもとはどこか違う様子のサッチさんに、私の熱はまた上がっていくのだった。
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