「「サッチといても眠くならない方法??」」

ふたり揃っているときよりも、片方がいないときの方がそういう話題になりやすい。
今回はサッチが遅れて参加するということで、その話題に答えるのは必然的にナマエとなった。
端から見ている感じではうまくいっていると思えるふたりだが、付き合っているとやっぱり本人には言えないような悩みのひとつやふたつが出てくるんじゃないか。
そう軽い気持ちで訊ねてみれば、困ったように眉を下げたナマエは周りを気にしながらも不思議なことを言い出した。

「は、はい。今それですごく困ってて…。」
「何だそれ?サッチが催眠術かけてくるってことか?」
「んなわけねえだろい。」

軽く叩かれた頭を擦りながら考えてみる。
サッチといると眠くなる?…いや、おれはむしろ目が覚めるぞ?
変な話だなあと思っていれば、隣のマルコがナマエに先を促した。

「ええと、外に出てるときじゃなくてどちらかの家にいるときなんですけど…」

それからのナマエの話をまとめるとこうだ。
これは家デートをしているとき限定の話だということ。
飯を食ったり遊んだりしている時は何ともないが、サッチと引っ付いたり横になると急に睡魔がやってくるということ。
前日にどれだけ寝ていても関係なく眠くなるらしく、昼下がりに意識がなくなって目が覚めたら夜だった…なんてこともあったらしい。
一方のサッチも一緒になって眠ってはいるようだがナマエはサッチよりも先に起きたことがなく、本人に聞いても「おれも今起きたとこ」と毎回似たような回答をされるために確かなことはわからないようだ。

「せっかく会ってるのに私眠ってばっかりで…。サッチさんは気にしてないって言ってくれるんですけど何だか申し訳ないし…。」
「まあ一緒にいるなら起きてたいよな。良い方法か…」
「そのままでいいだろ。」

あっさりとそう言ったのはイゾウで。
残りのふたりも声には出さないがそれに同意するようにうなずき合っていた。
まるで心配要らないとでもいうような顔だ。

「で、でも…」
「眠くなるのは安心してる証拠なんじゃない?」

安心している証拠。
ハルタの一言におれとナマエは一緒になって目を瞬く。

「ナマエはサッチと寝てるとき気持ちいい?」
「……」
「考えなくても夜まで爆睡してんだろい。なら」
「!ちょ、ちょっと眠りが深いだけです!」

顔を赤くして慌てるナマエを見るに、サッチの隣で眠るのはやっぱり気持ちがいいらしい。
仲間同士や友だちにはない、恋人だからこそ感じる特別な安心感みたいなものがあるんだろう。

「多分あいつも一緒に寝てると思うぜ?ここしばらく調子良いみたいだしな。」
「だろうね。休み明けのサッチって特にうるさいし。」

そういや頭が軽くてすっきりしてるみたいなことを言ってたけど…そういうことだったのか。
サッチの調子が良かったのはナマエのおかげだったわけだ。

「で、眠くならない方法いるのかよい?」
「……大丈夫です。」

意地悪く笑うマルコに顔を伏せたナマエは少し恥ずかしそうで、ひょっとすると照れているのかもしれない。
それもこれもサッチの調子が良くなったという事実を知ってしまったからだろう。
これでナマエの悩みは解決されたというか、そもそもふたりの関係が良好だから故に起こっていたことだったわけで……ん?つまり…

「これってのろけか?」
「!?」
「うーん、のろけだね。」
「ち、ちが!」
「何だ嬢ちゃん、顔が赤いぜ?」
「!みないでくださ」
「、来たみてえだな。…頼むからここで寝るなよい?」

まるでおれの相手をしろとでも言うように呼び鈴が連続して聞こえてくる中、ナマエは逃げるように部屋から出ていくのだった。
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