(ど、どうしよう…)

さっきのサッチさん絶対様子おかしかったよね?
それに最近キスする時間長くなったし、し終わったあともサッチさんなかなか放してくれないし…や、やっぱり今日泊まりなのってそういうことなの?そうなんだよね??
じゃあサッチさんがお風呂から上がってきたら……ああもう!?どうしたらいいの!?どうやって待ってるのが正解なの!?

「何してんの」

声が聞こえてはっと顔を上げると、Tシャツにジャージ姿のサッチさんが入り口近くに立って可笑しそうに私を見ていた。
自分の姿を見返したところ、ベッドの上なのに膝を抱えて座っているという何とも変な格好で。
しかもさっきは考え事真っ最中だったから、ひとりわたわたと変な動きをしていたに違いない。

「えと、その、」

言い訳を考えるけど焦っているから余計に頭が回らなくて、意味のない言葉ばかりが溢れてくる。
サッチさんはそんな私に苦笑しながらゆっくりとこっちに向かってきた。

「!ま、待って、」
「待たねェよ」

合計ふたり分の体重を受けてベッドが音を立てる。
思わず後ずさりする私の腕にサッチさんの手がかかり、ぐいと引き寄せられた。
大きな胸に埋まったその瞬間石鹸のにおいがして、今までの分を取り戻すみたいにどくどくと心臓が鳴る。

「ナマエちゃん」
「は、はい!」
「今日泊まりにした意味…何となく気づいてた?」
「、……」

じゃあ、やっぱり…。
サッチさんがそういうつもりで私を誘ったということがわかり、驚きとも不安ともつかない気持ちに私は口を閉じた。
黙りこくる私を見てサッチさんも気がついたのか、安心させるように頭を撫でてくれる。

「ナマエちゃんはどう?」
「どう、って…」
「…まだ待ってほしいとか、そういうこと。」

そうなるかもしれないと予想した上で今日ここに来たから、ある程度心の準備はできている。
不安が全くないと言えば嘘になるけど、それでも待ってほしいとは思わないし…それに、サッチさんとなら大丈夫な気がするから。

「あの、サッチさんは…」

見上げると、私のことを優しく包んでくれているサッチさんと目が合う。
今回の泊まりはサッチさんから言い出してくれたんだから、きっと私との関係を望んでくれているんだろうとは思うけど…やっぱりサッチさんの口から直接聞きたくて。
見つめ合ったまま沈黙が数秒続いたけど、サッチさんは突然私から腕を離すとそのまま両手を大袈裟に宙に上げて、きっぱりとこう言った。

「ナマエちゃんがいいって言うまでおれは絶対手を出しません」
「……」
「…って本当は言いたいんだけどその、情けないことに最近怪しくなってきてるから出来たら早めに良い返事がいただけると嬉しいっつーか…」

決まりが悪そうに視線をそらして、頬を掻いて、時々私の様子をうかがうように向ける目はちょっと恥ずかしそうで…そんなサッチさんの姿にたまらなくなる。
きゅうと胸がしめつけられて、溢れてくるのはサッチさんが好きだという気持ち。
サッチさんはまだもごもごと何か言っていたけど、それに構わず私は額をサッチさんの胸に寄せた。

「…サッチさん、」
「!いや、決して急かしてるわけじゃねえし全然待つから!」
「そ、そうじゃなくて。…よろしく、おねがいします。」

ぽつりと呟くと上からは何も聞こえなくなって。
あまりにも反応がないので少し不安になった私が上を向くのと、サッチさんからのキスを受けるのはほぼ同時だったと思う。

「んっ、、あ、っ、」

少し性急で荒々しいのに、怖さや苦しさよりも気持ちよさの方がずっとずっと大きい。
名残惜しそうに顔を離したサッチさんの視線は熱っぽくて、私のことを求めてくれているんだなということを実感させられる。

「…これよりもっと気持ちよくなっちまうけど本当に大丈夫?」
「…大丈夫、です。」

私がそう言うと、サッチさんは微笑みながら優しい目を向けてくれた。


◇リクエスト内容◇
現パロlong続編。初めてのお泊まりで男女の仲になるふたりのお話。
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