「た、隊長!よろしくお願いします!」

ぴしりと背筋を伸ばして向かい合った先には、私が属する隊をまとめる人。

「ん?次はフィルか、よろしくな。」

そんなサッチ隊長は私の想い人でもあるんだ。
今4番隊は甲板で手合わせの時間。
隊長は何十人と相手をしてるのに息ひとつ乱さない。

「…た、隊長!もうそれ止めてくださいって!」

さあ始まるぞ。
そんな時、隊長が刀を2本とも置いちゃった。

「だめ?でもフィルは女の子だろ?刀向けるってのはどうしてもなあ…。」

か、かわいく首かしげてもだめです!
毎回毎回…こんなときに女扱いされても嬉しくないんですからね!

「そんなの気にしなくていいですから!隊長!」
「ま、ハンデってことで。…来ねえならこっちから行くぜ?」
「わっ!?」

丸腰の隊長は一瞬で間合いをつめる。
私が慌てて後方に跳ぶと、隊長に「手合わせなのに逃げちゃだめだろ」なんてくつくつ笑いながら言われてしまった。

「…おー、また速くなったんじゃねえの?」
「っ、ありがとうございます。」

戦ってるときの隊長はすごく格好いい。
明るくて楽しい普段の雰囲気とはまた別に、真剣な表情やぎらついた目をするんだ。
普段の隊長も好きだけど、私はこのときの隊長も好きで…手合わせの時間はいつも楽しみ。
…だって、このときだけはどんなに隊長のことを見ていても変じゃないし、隊長も私だけを見てくれるから。

「…フィル?考え事はよくねえなあ。」

はっとする。
気づいたときには隊長がすぐ目の前まで来ていて、とっさに刀で防御したけど防ぎきれずに後方に飛ばされてしまった。

「!、けほっ、」

飛ばされた先の壁に背を打って軽く咳き込んでいると、ふっと影がかかる。

「それから、」

私のすぐ横に手をついた隊長。
ぎらついた目に、弧を描く唇。
顔は近くて、息さえ感じる距離。

「おれのこと見すぎ。…期待しちまうぜ?」

堪らず目をぎゅっとつむると、頭にあたたかい感触。
隊長の手だ。

「ちょーっと強すぎたな。大丈夫か?」

少し困ったように笑う、いつもの隊長。
どきどきしすぎて返事さえも返せず、一度だけこくりとうなずいた。

「ん、よかった。…おーい!次は誰だ!?」
「おれです!お願いしまーす!」
「っし!そっち行くからちょっと待ってろよ!」

まだどきどきしてる。
顔…赤くなってないかな。

「…フィル、」
「、はいっ!…隊長、ありがとうございました!」
「おう、あとでおれの部屋に来い。」
「はい!…へっ!?」

さらりと言われてつい返事をしたけど、よくよく考えれば私にとっては重大発言だ。
驚く私に隊長は不敵に笑って。

「さっき何考えてたか、じっくりたっぷり聞かせてもらうぜ。」

私、隠しきれる自信がありません。

(…え!ばれてたんですか!?)
(もちろん。毎回あんなアツい視線送られちゃったら気づくって。)
(な、何かすいません…。)
(いやー、それにしてもあのフィルの赤面した顔、かわいかったなあ。もう1回やっていい?)
(!?遠慮します…!)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -