「サッチ隊長、それじゃあ少しだけ待っててくださいね。」

目の前でにこりと笑うフィルは、おれの大事な大事な恋人。

「おう、楽しみにしてるぜ。」
「で、でもあんまり期待しちゃだめですよ?サッチ隊長のコーヒーには敵いっこないですから。」

んなかわいいこと言うなよ。
その華奢な体引き寄せて、今すぐ抱き締めたくなるだろ?

「ダイジョーブだって。フィルがつくってくれたら、それだけでうまいから。」
「た、隊長、それ反則ですよ!…じゃあ行ってきます。」

反則なのはフィルの方。
ちょっとからかっただけでこの反応だもんな、本当参るぜ。

「ん、ゆっくりでいいからな。」

ーー


「はい、お帰り。」
「わっ!?」

ドアを開けると、両手にコップを持って立っているフィル。
急に開いてびっくりしたのか、目が大きく開いている。
…どうやって入るつもりだったんだか。

「あ、ありがとうございます…。でも何でわかったんですか?」

当たり前だっての。
かわいい恋人の気配なんて、一発でわかるさ。

「んー、秘密。それより中入れ…あれ?」

何か雰囲気が違うと思ったら、髪がひとつにまとめてある。

「…あ、髪ですか?落ちてくると邪魔になるので…たまにまとめるんですよ。」

髪をまとめた姿を見るのは初めてだ。
いつもなら見えない首筋は白くてきれい。
…あー、うん。
こういうのされるとちょっと、なあ…。

「はい、どうぞ。味は保証できませんけど…あ、あれ?」

両方のコップをひょいと取り上げ、そばにあったテーブルの上に置く。
飲まないんですかなんて声が聞こえるけど答えはしない。
開きっぱなしだったドアを閉めて、不思議そうにおれを見つめる恋人を腕の中に閉じ込めた。

「ひゃ!?サ、サッチ隊長!?」

あー、やっぱり収まりがいいな。
いいにおいだし、やわらけえ。
それにすげえ落ち着くんだ。

「あ、あの!どうして、」
「肌、白いのな。」

固くなった体を思いっきり抱き締めたまま、のぞく素肌に触れるだけのキスを繰り返す。
いや、こんな肌見せられたらキスのひとつでもしたくなるっての。

「んっ、…たい、ちょ」

聞こえてくる声は、だんだんと艶が増してる。
明らかに感じてる声。
こんなの耳元で聞かされちゃあどうしようもねえって。

「!ちょ、ちょっと待ってくだ…あっ、」

舌で肌をなぞってやると、腕の中の体はびくりと反応を見せた。
待てるわけなんてねえだろ。

「もう無理、待てねえ。」

ごめんな、本当はちょーっとキスするぐらいの予定だったんだぜ?
けどさ、あんな声聞かされちゃあ…おれだって男なわけだし、な?

「フィル、口開け…」

ばんっ。

「サッチ、用があるからフィルを渡…」

…お、おうマルコ、すげえタイミングだな。
おれもフィルにちょっとばかし用があるわけで…

「マ…マルコさん?今お取り込み中だか…げふうっ!?」

け、蹴りやがった…!
しかもここぞとばかりに覇気使ってんじゃねえよ!!

「フィル、いつも言ってるだろい。こいつには注意しろって…」
「!あ、いや、えっと…」

こらマルコ!頭を撫でるな!
つーか…そんなこと言ってたのかよ!?

「た、隊長、大丈夫ですか…?」
「近づくんじゃねえよい。また泣かされるぞ。」
「お、おれは泣かしてねえ!」
「けど、今から啼かすつもりだったんだろい?」
「ちょ、それ意味違うか…ぎゃっ!?」
「マ、マルコ隊長!?」
「気にしなくていいよい。それよりフィル、話があるから来てくれるかい。」
「は、い…。サッチ隊長、あの、」
「ほらフィル、行くよい。」

振り返って心配そうにおれを見るフィルと、そんなフィルの肩を抱いて部屋から連れ出すマルコ。
…決めた、次はちゃんと鍵かけよう。

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