「マルコさん、次…あそこに行ってもいいですか?」
「ああ。そんな遠慮すんじゃねえよい。」

フィルと会うのは1ヶ月ぶり。
仕事が忙しくて時間を全くつくってやれなかったので、今日は何でもさせてやると伝えると、「一緒に居ることができればそれでいい」と言われてしまった。
無欲なフィルらしい答えなのだが、それではおれの気が済まないのでじゃあ、とフィルが代わりに提案した買い物に出掛けることになったのだ。
けれど。

「…それ、欲しいのかい。」
「!い、いや、ただ単純にかわいいなと思って…。」

どの店に入っても、手に取るだけで一向に買おうとはせず。

「疲れてねえか?」
「だ、大丈夫です!あ、あの…マルコさんは…」
「…おれの心配ならしなくていいよい。」

それに、何だかよそよそしい。
目も合わないし、顔もあまり見ようとしない。
…やっぱり家にいたかったんだろうか。

「…フィル、」
「、はいっ。」

せっかくだからフィルには楽しんでほしい。
直球過ぎるとは思ったが、本人に聞くのが一番手っ取り早いだろう。

「…家にいる方がよかったかい?」
「へっ!?な、何でですか?」

驚いたらしいフィルはやっとおれを見たが、慌てたようにすぐそらす。

「いや…楽しくねえんじゃねえかって思ってな。」
「そ、そんなことないです!十分楽しんでます!」

首を横に振って懸命に否定する姿を見ると、どうやら嘘ではないらしい。

「…じゃあ、様子がおかしいのは他の理由があんのかい。」

問うと、完全にうつむかれてしまった。
やはり1ヶ月はまずかっただろうか。
それとも、今日のおれの態度に問題があったのだろうか。
だんだんと不安になりつつフィルの言葉を待つと。

「…ひ、久しぶりじゃないですか、会うの。」

ぽつり。
うつむいたままの声は、おれに届くか届かないかのぎりぎりのところ。

「…ああ。」
「…久しぶりだと、その…恥ずかしいんです。」

言われて、やっと理解する。
フィルはこういう性格だった。

「み、見られてるって思ったら緊張して服選べないし、どきどきしちゃって顔見るのもやっとで目なんて合わせられないし…」
「……」
「出かけたら余計に緊張して…ごめんなさい。やっぱり変でしたよね、態度。」

恥ずかしさからか、困ったような笑顔をつくっている。
…ああ、もう駄目だな。

「…フィル」
「!、はい。」
「帰るよい。今すぐだ。」
「へっ、?」

理解できていなさそうなフィルの細い腕をとり、一直線に帰路を進む。

「マ、マルコさん、なんで」

買い物で私は十分なんです、とでも言いたげだ。
けれど、それではおれが満足しない。

「1ヶ月分愛してやるよい。恥ずかしさなんてぶっ飛ぶくらいにねい。」

おれの顔を見れないなら、無理矢理にでも見させてやろう。
顔を真っ赤にして大人しく着いてくるフィルに悪いとは思いつつも、そんなことを考えるのだった。

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