当たり前だけど、私が使っているベッドはごくごく普通のシングル用のもの。
そんなベッドをふたりで使うとなったら、しかもそのうちのひとりは体格の良い成人男性だったならどうなるだろうか。

「そんな端寄らねえの。もうちょいこっち来なさい。」

狭いベッドの中で横になるサッチさんは手で小さく手招きをした。
私にとってはとても甘い魅力的なお誘いだけど、そんな簡単に乗ってしまったらあとは溶かされてお仕舞いになってしまいそうだから口だけは遠慮してみせる。

「わ、私はだいじょうぶ」
「だめー」

サッチさんにとって私の体を動かすなんてとても容易いことのようで、あっという間に引き寄せられた。
あったかさも、においも、やわらかさも、全身でサッチさんを感じることができる。
ずっとこのままでもいいなあって思ってしまうくらいに幸せな気持ちで満たされるんだ。

「どうかした?」
「なんでもないです。」
「嘘つくんじゃありません。」

ぎゅっと腕の力が強くなって、それと一緒にじゃれるように顔を寄せられた。
くすぐったくて私が声をこぼすと今度は優しく包んでくれる。
背中をとんとんと当てたり、撫でてくれたり、そのまま抱きしめてくれたり。
好きだって言ってくれるのと同じくらい、もしかしたらそれ以上に嬉しいと感じる行為。
サッチさんのことだから私がそう思っていることをわかった上でやっていると思うんだ。

「んー…」
「どうしました?」
「いや、家デート増やそうかなーと。」
「何でですか?」
「フィルちゃんが甘えてくれるから。」

そんなことを言われると途端に今の状態が恥ずかしくなってくる。
少し距離を持ちたくて腕から抜け出そうとしたものの、それを感じ取ったサッチさんに呆気なく阻まれた。

「…だって、その、」
「だって?」
「家にいると気が抜けるというか…。それにサッチさんにぎゅってしてもらうの…すきなんです。」

そのすぐ後、額にキスをされる感覚があって。
私が自然と顔を上げた瞬間、そのまま口にも同じことをされた。
一度離れたけどそれはまた降ってきて、今度は舌を絡めとるように深いキスをされる。
私の思考がぼやけだしたころ、顔を離したサッチさんは唇を舐めてくすりと笑った。

「これとどっちが好き?」
「…サッチ、さんは?」
「比べられねえな。」

私もだと思ったけど、それを伝える前にサッチさんはまた同じ場所にキスをくれた。

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