「フィルです。今大丈夫ですか?」
控えめなノックのあとに続いた、おれのよく知る声。
おれが特別可愛がってるやつだ。
「おう、どうした。」
ドアを開けてやるとフィルは少し恥ずかしそうな、けどそれ以上に嬉しそうにおれを見上げる。
…あーもう、しねえのはわかってるけどおれ以外にそれするんじゃねえぞ?
「す、少し話があるんですけど…。」
「ああ、別にかまわねえけど…中入るか?」
「!いえ、すぐ終わりますから!」
おれのことが好きなくせしてこういう誘いは乗ってこねえ。
真面目なんだか遠慮してんだか…まあどっちにしろかわいいもんだ。
「もうすぐ上陸じゃないですか。その間って隊長はずっと忙しいんですか?」
「んなことあってたまるかっての。まあ隊長だけに割り振られてる仕事もあるけどそんな多くねえし。…暇してる日の方が多いんじゃねえ?」
せっかくの上陸なんだから楽しまなきゃ損だ。
あの島は結構でかいし酒もうまいやつが揃ってるからな…ああ楽しみだ。
「で?それがどうかしたか。」
「…あ、あの、いつでもいいんですけど」
「おう。」
「もし何も用事がない日があったら、い、一緒に…その、」
…こりゃ驚いた、どうやらフィルはおれをデートに誘おうとしているらしい。
奥手で自分から仕掛けるなんて絶対にしねえとばかり思ってたんだが…ふうん?なかなか大胆なことしてくれるじゃねえか。
「ああ、遊びに行きてえのか。いいぜ。」
「本当ですか!?」
「決まってんだろ。そうだ、他のやつも誘うか?マルコなんてほとんど部屋の中引きこもってるだろうし連れ出してやるのもいいかもな。」
「っ、ええと…」
…あーあー、やっぱ困ってんなあ。
わかってるって、おれとふたりがいいんだろ?
「冗談だよ。遊びに行くってのにあんな仕事人間と一緒にいられるかっての。」
「!じゃあ…」
「おう。おれと行きてえとこ、たくさん考えとけよ。」
「あ、ありがとうございます!」
ぱっと顔を輝かせるフィルに苦笑する。
約束を取り付けたから、嬉しいのと恥ずかしいのとで内心大慌てしていることだろう。
「フィル」
今回は珍しくフィルが積極的だからな、少し楽しませてもらうか。
「誘ったのはお前なんだから、おれをおとす気で来いよ?」