金曜日といえば次の日が休みで気分もちょーっと開放的になって仕事終わりに飲み屋で一杯、なんてことをしたくなる。
「串来たよー。天ぷらももうすぐだって。」
「「おー。」」
ちょうど今のおれたちがそう。
うまい飯と酒があれば自然と会話も弾むわけだが…。
「サッチのとこって子どもつくらねえの?」
「ぶふっ!?」
このおバカ!この子ったら何てこと言い出すの!
そんな話題をぶっ込んでこられるとは思ってもみなかったため、ちょうど飲んでいた酒が変な所を通ってしまった。
「ちょっと!…すみませーん、おしぼりもうひとつもらえませんかー?」
「ばばばっかやろう、そういうのはお前らにゃ関係ねえだろ、」
「だってサッチももう40手前じゃん。ほしいなら早くしねえと。」
「そうだな、枯れちまうよい。」
「黙れバナナ。」
おれより先に子ども出来たからって調子に乗りやがって…くそ。
しかしまあエースの言う通り子どもをつくるならそろそろというラインには来ている。
じゃあ何でつくらないかって?
別に経済的な心配があるってわけじゃねえし、むしろ先見越して貯めてたからおれとしては二人でも三人でもウエルカム状態なわけだ。
「そりゃほしいけどな…結婚したばっかだし子どもつくったらフィルが遊べねえし…」
「本音は?」
「…さっき言った。」
「嘘じゃねえけどそれだけじゃねえだろい。」
「……笑うなよ。」
すぐ見抜かれるとは…付き合いが長いってのも考えもんだ。
…こういうときだけそんな注目すんじゃねえよ、普段みたいに適当に流してくれっての。
「こんなオッサンが子どもほしいなんてよ…ひとりがっついてるみてェで格好悪いだろ。」
喋り終えてちらりと視線をやれば、あろうことかそいつらは大口を開けて笑ってきやがった。
畜生!言ったおれがバカだった!
「『ひとりがっついてるみてえでカッコわるいだろ』…ぶふっ!」
「あはは!似てる似てる!」
「今も十分格好悪ィよい。」
「ああ、言えて」
「黙れー!…くそッ!今日は飲んでやる!」
もう言わねェ!これからは何聞かれても絶対に答えてやらねェからな!!
そう心に決めたおれは運ばれてきたばかりのビールを一気に流し込むのだった。