「あ、あと一ヶ月もないよ、どうしたら、」
「落ち着きなさい。」

大変だ!
サッチさんとお、おお温泉旅行に行くことになっちゃった!
しかも二泊三日だよ?三日間サッチさんとずっと…朝から晩までずっと一緒にいられるってことだよ??
…どうしよう!?

「な、何持っていこう、着替えでしょ?化粧品とかでしょ?アイロンと充電器と、それからお菓子と、」
「それ入る鞄ある?」
「!そ、そっか、それ買わなくちゃ」
「メモは?」

そう言って友だちがメモ帳を差し出してくれるのでお礼を言いつつ一枚ちぎり、忘れないうちにペンを走らせる。
明日明後日のことじゃないのに楽しみで仕方がなくて、カレンダーや手帳を見ては残りの日数を数えてひとり喜んでしまうほどだ。

「楽しそうねえ。」
「だ、だってサッチさんと旅行だし、温泉だし、ふたりで一日中一緒とかなかったし、」
「一日どころか次の日も一緒でしょ。」
「そうなんだけど、」
「浴衣姿も見れるし?」
「!」

私が知っているサッチさんは私服かお店の服。
色のあるカジュアルな服装の時もあるし、服はシンプルなものにして髪型で遊んでいる時もあったよね。
お店の時は上が白のシャツで下は黒だったと思うけど…どんな服装でも結局は似合っていて、しかもすごく格好いいから困る。
でも今回の旅行は温泉で、きっとサッチさんも浴衣を着るはずで。
……だ、だめだ!こんな所で想像しちゃだめ!

「ホワイトデー挟んでるんだっけ。」

はっと顔を上げれば友だちの愉しそうな顔。
旅行だけでも一大イベントなのに温泉もホワイトデーも一緒だなんて…わ、私大丈夫かなあ…。

「絶対何かありそうよね。」
「…すごくがんばるとは言われた。」
「で、すごーくがんばってもらえるような結果だったの?」

からかうような視線から顔を背けつつあの日のことを思い返す。
あの日の夜はサッチさんの仕事が終わってから会う約束をしてて、がんばってつくったフォンダンショコラを渡したんだ。
そうしたら早く食べたいし感想も言いたいからって…予定外にもサッチさんの家にお邪魔することになって。
チョコはおいしいって言ってもらえたからよかったんだけど…問題はそのあと。
サッチさんにもっとほしいって言われて、ぎゅってされたと思ったらいっぱいキスされて、そこからずっとくっついてて……う、うん、とりあえずサッチさんは嬉しそうにしてくれてたと思うから……

「……た、ぶん。」
「あーもうこっちが恥ずかしくなるわ。」

顔を隠すためにぺたりと覆った頬はとても熱かった。
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