初めて来た島で初めて過ごす夜は決まって海の中。
島の中心街の方はうっすらと明るく、上空にかかった大きな虹が輝いて見える。
夜でも虹が見えるなんて不思議だけれど…そんなことが気にならなくなるくらいきれいだ。

「気持ちいいな…」

…そういえばサッチさんは今ごろどうしているだろうか。
こんな時間ならみなさんと一緒にお酒につぶれているのかもしれないし、もしかしたらまだ騒いでいるのかもしれない。
サッチさんは上陸はいつも楽しみだと言っていた。
お酒を飲んで遊び回るのもそうだし、自分の知らない食材や料理に出会えるかもしれないからだそう。
本当はみなさんと一緒ですぐにでも降りたいのかもしれないのに新しい島に着けば一番に私を誘ってくれる。
…それを私はいつも断ってしまうけれど。
一緒に島へ降りられたら楽しいだろうか。
ううん、きっと楽しいに決まってる。
優しくて面白くて賑やかで、頼りになって実はすごく真面目で…あの人は本当に不思議な人だ。
あの人といると落ち着くのに、その一方で何故かどきどきとしている自分がいる。
それに最近は気がつけば目で追ってしまって…

「…え?」

そこで下半身に感じた違和感。
どんどんと変化するそれにただ戸惑うことしか出来なくて、何の対応もとれないままに終わりをむかえてしまう。
慣れない体がゆっくりと海に沈もうとするので慌てて腕を動かした。

「や、だれか、」
「…フィル?」

不格好に音をたてながら海面に顔を出してたところに偶然気づいてくれた人がいて。
船の縁から顔をのぞかせたその人はマルコさんで、安心から思わず体の力が抜けた。

「マ、マルコさん…」
「どうした?何かあったか?」

能力で両腕を変えたマルコさんがばさりと飛んで様子をうかがいに来てくれる。
心配そうに声をかけてくれるのに、突然起きた予想外の出来事に気が動転して上手く言葉が出てこない。

「どうしよう、わたし…」
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