天下の白ひげ海賊団は今夜も宴で騒がしい。
今回は何が理由で始まったんだっけなあ…あー、そういえばエースがバカでかい魚釣って、それで調理してくれって言われて…気づいたらこのどんちゃん騒ぎだ。
まあ正直理由なんてどうでもよくて、楽しけりゃそれでいい。
しっかし…いーい夜だなあ。
月がきれいで海も穏やか。
みんなバカ騒ぎして、オヤジが笑って。
…ああ、一段と酒がうめえ。

「サッチ何たそがれてるの?そんなキャラじゃないじゃん。」

瓶を一本携えたハルタがひょいと隣に座る。
まあこいつがオトナの世界を理解するにはまだ早いってことか。

「ばっか。おれだってそういうときくらいあんだよ。」
「はっ、うぜえよい。」

船の縁に腰かけて。
そう鼻で笑ったマルコが酒瓶を傾ける。

「あー悪い悪い、万年南国果実はそんなときねえもんな。」
「ああ?喧嘩売ってんのかよい。」
「お?じゃあ久しぶりに飲み比べでもするか?」
「上等だよい。負けた方は…」
「マルコ!どいてくれー!!」

叫び声のする方を向くと、こちらに向かって全速力で走ってくるエースの姿。
そういやさっきうたた寝してるイゾウの顔に落書きしてたような気が…。

どんっ!

「「「あっ」」」

気がついたときにはマルコが空中に投げ出されていて。
マルコ自身も何が起こったとでも言うような顔をして、そのまま。

ぼちゃん!

しん、と場が静まり返る。
とりあえず状況を整理しよう。
エースがマルコにぶつかって。
それでマルコが吹っ飛んで。
それから。

「…落ちたな。」
「うん、落ちたね。」
「どこに?」

三人で顔を見合わせる。
流れる沈黙。
そして、揃ってマルコが消えた方向を見て。

「「「……海だ!!」」」

マルコは海に落ちるとかそんなバカなこと滅多にしねえやつだから、こんな何でもねえときにされると対応に困る。
…あー、くそ。
そりゃ急だったけどよ、あいつもあいつで能力使って飛ぶくらいしろよな…。

「ぼく行こうか?」
「いい、おれが行くわ。本当能力者って厄介な呪い抱えてるよな…、ん?」

縁に足をかけて飛び込もうと思ったときだ。
海面からぶくぶくと泡がたって、揺らめいて。

「…ぷはっ!」

そりゃ驚いた。
泳げねえはずのマルコが海から顔を出したんだ。
しかもそれだけじゃねえ。

「…女?」

マルコと一緒に女が現れたんだ。
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