微裏
義兄弟パロ(高校生設定)






父さんが再婚することにしたらしい。

そして俺には、同い年のきょうだいが出来ることになった。



再婚相手との顔合わせ兼食事会は一週間前に決まった。
俺はそれまで相手がどんな女かも知らなくて、さして興味も無かった。
だってもう俺だって高校生やし、そない母親が必要な年齢でもない。
だから食事会とか言われてもあんま気乗りしてなかったんやけど…



「謙也、この人がお前の新しいお母さんになる人や!」

って紹介されても、あーそうですか、みたいな。
まぁいい人そうだし、文句もない。

「よろしくね、謙也くん」

って笑うその人を母親って思えって言われてもピンとこなかったのは確かだけど、それも慣れだろうし問題ない。何より美人だ。
親父は俺と同じでメンクイ。好みもちょっと似てるみたいだ。
この人が俺と同い年くらいだったら口説いてたかもしれへんな、なんて。

「ごめんなさいね、うちの息子はちょっと遅れるらしくて…」
「同い年とはいえお前の方がちょっと年上やからな。仲良うしろや」

そっか、確かこの人も離婚歴アりで子供がいるって話は聞いてた。
男かよ。この人に似てる女の子だったら良かったのにな。つまらへん。

新しい母さんはもちろん、珍しく親父も少し俺に気を使ってるみたい。
適当に目の前にあるサラダとか食って間を持たしてたけど、ちょっと気まずいな…
こんな雰囲気がずっと家に帰っても続くのは嫌やなぁ、なんて思ってた時だった。

「すいませーん、遅れてもーた」

俺の背後から聞こえた声は低いけどよく響く声。

「蔵!遅いわよ」



振り向いた瞬間



俺とそいつは固まった。



「……………」
「……………」
「謙也くん、この子がうちの息子の蔵ノ介よ。仲良くしてやってね」

簡単に親父とそいつが挨拶して、母さんは俺にそいつを紹介した。

俺より背がちょびっと高くて、綺麗な糸みたいに細い薄茶の髪の毛。
色が白くて細くて、一見華奢な体型。
その顔は綺麗な体型を裏切らない母さんによく似た完璧過ぎる美形。



そして何より



俺はそいつを知っていた―――――



「…蔵?どうしたの、黙っちゃって…緊張してるの?」

少し楽しげに笑う母さんの声も遠くに聞こえる。
これは…由々しき事態だ。

「謙也まで黙ってどうしたん?母さんに似て美人やから驚いとるんやろー」



…こういう時にどう返答すべきなのか、その答えなんて俺は持ち合わせてない。



まさか



再婚相手の息子が俺の元・恋人だなんて―――――



誰が言えるだろう?

自分の息子、息子になろうとしてる子供が男同士にも関わらず付き合ってました、なんて。
…洒落にもならへん。これが男女ならとんだメロドラマの始まりだ。

「けんやくん?よろしゅうな、俺蔵ノ介」

何も言えずに黙り込んだ俺に、蔵ノ介は何事もなかったかのように笑いかけた。

「あ…あ、うん…よろしゅう…」

全くそ知らぬふり。
ここは俺も乗っておいた方がいいんだろう。
どうしてもぎくしゃくしてしまう俺に対して、蔵ノ介は滑らかに順応した。
『初めて会った、これから一緒に暮らすことになる兄弟』
という形をこのまま通すつもりらしいので、俺も便乗することにする。



そのまま食事会は表面上は和やかに進んだ…



けど、当然俺の心中は穏やかではなかった。
これからの生活のことを思うと頭が痛い―――――






「おはよう、謙也くん」
「おはよう」

それから数ヶ月後、予定通り俺達は家族として暮らすことになった。

俺と蔵の高校は別だったから、その中間辺りの家に引っ越した。
とりあえず今のところは…俺達の関係に両親は気付くこともなく過ごしている。

「ごめんねぇ謙也くん。ちょっと蔵のこと起こしてきてくれる?」
「…あー…うん」

俺達自身はといえば…

こちらも今のところ、問題なくきょうだいとしてやっていけてる。
っていうかあまりにも何事も無かったように接してくるから、もしかして付き合ってたの夢なんじゃね?って思ったのも一度や二度じゃない。

一緒に暮らすようになってからも一度も過去の話はしていない。
傍から見たら本当に、普通のきょうだいらしく見えてるんだろう。
俺はともかく蔵の猫被りっぷりは凄まじかった。
これまでも母親の前ではこんなイイ子ちゃんだったんだろうか…






蔵の部屋の扉をノックする。

「おい、蔵。起きとる?」

小声で言ってはみるものの、コイツはこのくらいじゃ起きない。
朝に極端に弱いのは数年前から知ってる。
これ以上朝飯が遅れるのも嫌だったから、仕方なくドアを開けた。



カーテンも閉まったままの、薄暗い部屋。

蔵のシャンプーの匂いがうっすら香るような気がする。
ベッドの上には頭まで布団を被った蔵。
その布団から長めの薄茶の髪が覗いている。

(相変わらず髪の毛綺麗やな)

俺と違うて天然のその色に苦笑しながら、ついその髪の毛に指を絡める。

「…ぅ………?」

軽く引っ張ったら蔵がうめき声を上げた。
でもまだ完全に覚醒はしてないらしい。
少し頭を布団から出して眉を顰めている。

「起きや、蔵。朝飯やでー」

軽く頭を叩いたら嫌々するみたいに首を振った。
相変わらずかわいーな、なんて、思っちゃいけないことを考えて、咄嗟に頭からその考えを掻き消す。

「ん…け、…や…」

少しは頭がはっきりしてきたのか、蔵が俺を呼んだ。

「おん。遅刻すんで。起きろって」
「んう…」

一瞬薄目を開けた蔵は俺を見てまた目を閉じて唇を尖らせる。
形のいい唇が窄められるのが、俺は昔から好き。
「キスして」って言ってるみたいで、俺は目を逸らせた。

「けん…おはよ…」
「…おはよ」
「おはよー…の、ちゅーして…」
「はぁ!?」

寝ぼけとんのかコイツ。
俺の内心の動揺を知ってか知らずか、蔵は色気たっぷりに目を眇める。

「ちゅー…」
「…ねぼけとんのか、お前。さっさと起きろ」
「ちゅーしてくんなきゃ、起きない…」

甘えるような蔵の声を聞くのは本当に久しぶりで、心臓に悪い。
なのに蔵は尚も食い下がる。
また布団に潜り込んでいこうとするから困ってしまう。



………仕方あらへん、か。



寝ぼけとるんやし…



「ん」

ちゅって音立てて、頬にキスした。
…ら、途端に蔵が思いっきり俺の腕を引いた。
俺はバランスを崩して思いっきり蔵のいる布団にダイブする。

「って…おま…!」
「んー…」

慌てて顔を上げると、余裕の顔して笑ってる蔵の顔が目の前。

こいつ…っ、

「…お前とっくに起きてたやろ」
「へへ、当たり」

…忘れてた。コイツ昔からこういう奴やってこと。

「謙也昔からコレ、引っかかるよなぁ」

楽しそうな声。

そうや、俺昔からコイツのこの甘え声に騙されてベッドに引きずり込まれてたっけ。
まぁ俺ら学生だし、そんな頻繁にお泊りなんて出来なかったけど…
たまに金入ってラブホで宿泊なんてした日にゃいっつもこうやった。

んで…この流れは…



「謙也…ちゃんとキスして」



…やっぱり…



「…何考えてんねんお前。下、母さんもおるんやからな」

さっさと降りていかないと心配して上がってくるかも。
そんでこんな体勢の息子2人見ちゃった日にゃ寝込まれるぞ。
言外にそういう雰囲気を滲ませて言ったのに、当の蔵は全然意に介してない。

「…キスしてくれないなら『けんやに襲われるー』って叫んでやる」
「ちょ、おま…」

意地悪で楽しそうな顔した蔵を俺は知ってる。



「…特別やからな…」



こうなったら折れないことも。

だから仕方ない。

って大義名分。



「ん…ちゅ、っ…」

久しぶりに触れた蔵の唇は夜気が残ってるかのようにひんやりしてた。

「…っは…ぁ、ふ…」

なるべくさっさと済ませたくて早急に唇を合わせてるのに感じてるような声を出すから、俺だってまだまだ年頃の高校生、ちょっと変な気分になってまう。

「ぁ…ぁん…ぅ、」
「………っ」

これ以上やったらまずい。

「………ん………あれ、もう終わり?」

さっさと唇を離した。

「終わり。早く支度して降りてこいっちゅー話や」
「ちぇ…」

まぁいーか、なんつって蔵はやっと寝乱れたベッドから起き上がった。
俺は先に下に降りようと蔵の部屋を出ようとしたら



「謙也。キスうまくなったなぁ」



背後から聞こえるそんなからかうような声を聞いて、俺は扉を大きな音を立てて閉めた。






「あら?蔵は?」
「今来る。あいつ寝起き悪すぎ」

階下に下りたら完全に準備の整った朝食の並ぶテーブルの前で母さんがコーヒー飲んでた。

「あの子今までは寝起き良かったのに…最近いっつも遅いわよね。どうしたのかしら」
「……………」

寝起きのいいあいつなんて俺見たことない。
母親の前ではやっぱいい子なんやな。



「おはよー」
「おはよう。全く最近どうしちゃったの、蔵?前は一人で起きれたでしょ?」
「最近寝不足だからかなぁ」
「ちゃんと寝なさい。毎朝謙也くんに起こしてもらって…謙也くんが大変でしょ」
「あーそう?ごめんな、謙也」

にこにこ笑う蔵の綺麗に整った顔を見て、察した。

「…狙ってやがったな?」

母さんが蔵の分のコーヒーを淹れにキッチンに立った時、小声で蔵に呟いた。

「まぁなぁ。なのに謙也、なかなか布団に入ってきてくれへんから参ったわ」

…当たり前やろ。

今までは蔵を起こしに行っても、声かけるだけで触ったりしなかった。
それが今日うっかり触れてしまったらこの有様だ。
でも蔵にとってはこれこそが狙いだったらしい。

「お前、寝坊はわざとか」
「さぁ、どうでしょう?」

思わせぶりに笑う顔は女だったらさぞコアクマだろうな。

「明日も頼むで、謙也」何か言い返そうと思ったけど、その時母さんがキッチンから戻ってきたから、やめた。






「っん…はぁ…ぁ…」
「…、は…」

あれから毎日俺は蔵を起こしに来ては、キスするようになった。

「…ぁー…ゃばぃ…勃ってもーた…」
「抜いてから来や」

長いキスから唇を解放したら艶っぽい声。
危うく自分の理性まで手放しそうになりながら、突き放すように冷たく言った。

「謙也、抜いてや」

なのに蔵はまったく気にしない様子でそんなこと言ってのける。

「……………アホ」

欲情した顔がバレないように背を向けながら小声で呟いた。






毎朝毎朝自分の中の欲と戦いながらの朝食。
正直持たへん…
でもだからって蔵を起こしに行かない、行ってもキスしないって選択肢は何となく、ない。

「…でね、謙也くん、よろしくね」
「…あ?」

母さんが何か言ってたらしいけど、全く聞いてなかった。

「明日父さんと母さんデートやて。俺ら留守番」

聞いてなかった俺に簡単に蔵が説明してくれた。
デート(笑)まぁええんやないの。

「分かった。行ってくれば」
「ありがとう。お土産買ってくるわね」



……………



ん?



「明日は謙也と2人っきりかぁ」



!!!!!



…そういうことか!
それは…やばいんじゃないか。
今2人だけになったら俺何しでかすか分からんし!

そのくらい俺は切羽詰ってるのだ。

これは…非常にまずい。

蔵はただでさえ俺好みの美人なうえ、ここ最近やけにフェロモン撒き散らしてる。
こんな状況で2人っきりは…無理だと思う。
どないしょー…なんて頭の片隅で考えながら学校へ行くために家を出た。






「けんや!」

学校へ行く道すがら、後ろから追いかけてきたらしい蔵が声をかけてきた。

「…何」
「明日せっかくだし俺らもどっか行く?」
「何がせっかくやねん。行かんわ」
「じゃあ家で2人きり?」
「……………」

「ね、じゃあさ…家でシようや…」

何を、なんて…蔵の艶のある低音で囁かれれば聞かなくても分かる。

「…俺、明日出かけるし」

思わず頷いてしまいたい衝動に駆られながら、適当に答えたら蔵の足が止まった。

「なんで?誰かと約束あるん?」
「………」

そんなもん、ない。

「謙也は…俺と一緒にいるの嫌なん?」

そんな顔、すんな。

「…そんなんやないけど」
「じゃあ何で冷たいん?」

欲情してるから、なんて言えへん。



「俺達…きょうだいやろ」



蔵の顔は見ないまま呟いた。
ちらって横目で蔵を見れば、今にも泣きそうな顔してた。

「血なんか繋がってへんやん」
「そうやけど…」
「俺のこともう嫌い?」
「…そうやないけど…」
「キスはしてくれんのに、何でアカンの?」

立て続けに質問が飛んでくるのに、俺は気の利いた言葉ひとつ返せへん。

「…そんなん言うなら、もうキスもせえへんし」

そう言った途端に蔵の顔が歪んだ。
泣く、って思ったけど、蔵は涙を堪えるように押し黙っただけだった。
なんかこの顔、見た覚えあんな…

「俺はまだ謙也が好きやのに」

…ああ、そうや。

俺、別れ際にこんな顔させたんや。

俺は?

俺は蔵のこと好きなんか?

答えを求めるように黙ったまま俺をまっすぐ見つめる視線に耐え切れなくて、
俺はその場に立ち尽くした蔵を置いてそのまま学校へ行った。






翌日。



「じゃあ、行ってくるな」
「2人とも一日よろしくね」

父さんと母さんは予定通りデートに出かけるために玄関に居た。

「蔵はまだ寝てるのかしら?」

見送りは俺一人。

「いってらっしゃい」

2人は蔵がおらんことをさして気にも留めずに出かけて行った。



昨日、学校から帰って来てから蔵は俺と口を利いてくれない。
いつもはうるさいくらい謙也謙也言うて付きまとってくる癖に。
でも俺も頭整理したかったからそれは助かった。

蔵は元気がないとかそういうこともなくて、至って普通。
朝あんな泣きそうな顔しながら俺に告白したなんて嘘みたいに。
ただ目線すら合わせてくれずに普通通りの態度を取る蔵に、理不尽だとは思うけどショックを受けてる俺がいた。



……………



なんだかなぁ、畜生。






朝から一度も部屋から出て来ない蔵の部屋の扉をそっと開ける。
いつもの朝と同じようにカーテンが閉まったままの暗い部屋。
そっとベッドの中の蔵の顔を伺えば、どうやら今日は本当に寝てるらしい。
薄暗い部屋の中目を凝らせば、頬に涙の伝った痕が乾いていた。

「―――………」

それを見た途端、心が痛くなる。



『俺はまだ謙也が好きやのに』



―――――



「ん…ぅ…?」

気がつけば蔵の形のいい唇に口付けてた。

「ぅ、ん…けん…?」

キスの合間に、目が覚めたらしい蔵が俺を呼んだ。
まだ目が覚め切ってないのか状況を把握できないらしい。
本当の寝起きの、ふにゃふにゃした声が可愛い。

「け…、なん、で…?」

問いかける声を無視してキスを続ける。
舌を絡めて、口腔をくまなく嘗め回す。

蔵が感じるように、的確に。
数年前から感じる場所は変わってない。

「何で…キスせえへんって言うた癖に…」

理由や言葉を欲しがるとこも、変わってない。
こいつと付き合ってたあの頃、俺はそういうのが煩わしかった。
俺は歯ぁ浮くような台詞よう言えんし、蔵が欲しがる言葉がうまく言えなくて。

『何で好きって言ってくれないの?』

とか、悲しげな顔で言われるたびにむかついた。
何で言わなきゃわからへんねんって、腹立った。
そんでめんどくさくないよーな女作って、一方的に別れた。



『俺はまだ謙也が好きなのに』



別れる時も、コイツはそう言った。
泣かれたら、別れたくないって縋られたら、戻ろうと思った。
―――だけどこいつは泣かなかった。



「…けんゃ…」



なのに今、こいつは泣いてる。



「…蔵、好きや」



嬉しそうに、泣いてる。



ほんとは…

縋られたかったんだ、って気付いたのは、蔵と再会してからだ。
ほんとは、好きだって、俺も好きだって言いたかったんやって気付いたのは、今。

「…2人とも出かけた。今日は家で、スるんやろ」

照れ隠しにそっぽ向いて言ったら、視界の端で蔵が嬉しそうに頷いた。






「…ぅわ、キツ…っ」

久しぶりに挿れた蔵の中は、記憶してた以上にきつくて熱かった。

「ぁっ…、いた、ぃ…?」

自分も痛いだろうに俺のことを気遣う蔵に愛しさが込み上げる。

「ちょっとな…緩められる?」
「ふ…ぁ…ごめ…っ、むり、かも…」

何度も息を吐き出すものの、久しぶりの行為でコツが掴みきれないらしい。
こーゆー時は完璧に欲情させてまうに限る。
体の力抜かへんと始まらんからな。

「な…蔵、おにーちゃんって呼んでや」
「はぁ…?っあ!」

小さく揺さぶりながら言えば蔵が怪訝な声を上げる。

「間違ってはないやろ?俺おにーちゃんやもん」
「タメやろ…っ」
「ええから言えって」

半ば強引に言えば蔵は全身を紅潮させながら

「…ぁ…んっ、ぅ…ぉ、にぃちゃ…ん、」

…あー…これ、思ったより興奮するわ。

「ちょ、け…!おっきくなった、ぁ…!」
「すまん。けっこーええわぁ、それ」

中で膨張した俺自身を蔵は如実に感じ取ったらしい。
体を逸らせて息を詰める。

「おにーちゃん…の、痛い…っあ!はぁ…ん」

蔵もだんだん乗ってきたみたいで、痛いとか言いながらも中の具合が変わってきた。

「蔵…おにーちゃん動いたるから、ええ声出しや」
「ひぁ…!あ…あーッ!おに、ぃちゃ…!急に動いちゃあか、ぁ…っ、」

腰を思い切り引いて突き入れる。
ひくひく震える中と連動して、蔵自身も震えながら先端から先走りを零す。
こうなるともう早いもんで、お互い一気に上り詰めていった。

「あっ、あ…あぁあッ!ん、はぁ…っあ…おにーちゃ、んぅッ」

動きに合わせて漏れる喘ぎ声に、俺も益々欲情する。

「あ…ヤバ…俺も声、出る…ッう…」
「き、かせて…ッ謙也の…っ、ぉにいちゃん、の、声…!」

そんなかわいー声出されたら限界や。

「っく…ぁ、はぁッ、あ…」
「あぁ!あー…っ…おにいちゃん、の声、ィィ…」

もう、息も絶え絶えな蔵の吐息が耳にかかるたびに俺も感じる。

「あっあっ、ぁあ…けん、や…謙也ッ…」
「ん…?っ、イキ、そ?」
「もぉイク、イク…ひ、ぅああぁ…ッ」
「ええ?蔵、ええって言って…」

耳元で囁けば蔵の体がぶるりと震えた。

「あ…ッええ、ええよぉッ!んっ、ぅう…ひゃ…ッもうぃく!」

声がいよいよ切羽詰って、声がどんどん高くなる。
体に言葉がついていかない、って感じで蔵は自身から白く液体を飛ばした。

「ぅ…っあ、俺、も…」
「ナカ…ええ、よ…はぁッ、ナカ、出して…!」

荒い吐息でそんなこと言われて、我慢なんて出来るわけない。
俺もそのまま数年ぶりの蔵の中に全て吐き出した。






―――――今朝もいつも通りの朝が始まる。

「おはよう、謙也くん」
「はよ…蔵、起こしてくる」
「いつも悪いわねー」

それからも蔵は毎朝寝坊を続けた。
そしてそれを起こすのはいつも俺の役目。

蔵の部屋までの足取りは軽いもんだ。
何も知らない父さん母さんに罪悪感を覚えないこともないけど…
どーせ血繋がってへんし、悪いことしてるわけやあらへん…よな?

「蔵、起きろ」
「んぅ…けんや、ちゅぅ…」

相変わらずキスを強請る蔵。
でもキスしてるうちにいつも欲情しちゃう俺。

「朝だから、アカン。さっさと起きや」

一応自制してる俺を知ってか知らずか蔵はいつもコアクマだ。

「ちゅーしてくんなきゃ起きれへん。…おにーちゃん」
「〜〜〜〜〜っ」



いつも勝てない。



結局母さんが階下から俺達を呼ぶまで口付けは続く。



「蔵ー、謙也くん!早く降りてこなきゃ遅刻よー!」



 


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