「蓮二兄さん…ずっとこうしたかった…」

赤也はベッドに縫い止めた手首は離さないまま、蓮二の首筋に齧り付いた。
まだ自分よりも幾分背の高い兄を見下ろせる機会などそうありはしない。

「あ…赤也…っ!やめ…!」
「あんな男、忘れちゃいなよ…」

確かに蓮二には同性でありながらも愛し合う恋人がいた。
だがその恋人と喧嘩をしてしまい退屈な休日を過ごしていたら、思いもよらないことになってしまった。
兄である蓮二の部屋にいつものように上がり込んで、無邪気に会話を楽しんでいたのも束の間―――

赤也は唐突に蓮二をベッドに押し倒したのだ。
いつもなら家に誰かしらいるにも関わらず、今日に限って誰もいない。
いくら蓮二が叫んでも誰にも届かないということだった。
蓮二は絶望と共にその美しい双眸から涙を滴らせた。
赤也はその眦から零れた涙を、まるで蜜でも啜るかのように吸い上げる。

「兄さん…俺…、もう我慢できない…ッ」
「赤也、駄目だ…!」
「兄さんッ!」

肌蹴たシャツの胸元に顔を埋めて、赤也は舌先でその真っ白な雪のような肌を舐め上げた。
舌先に伝わる冷たい感触はさながら本物の雪のようで赤也は更に下半身に熱が篭るのを感じる。

些か早急に過ぎるかとは思ったが、若き血潮は最早止まることを知らない。
赤也はすぐさま蓮二のジーンズを下着と共に脱がした。
自分のジーンズの尻ポケットに入れておいたローションを手早く手に垂らすと、蓮二が抵抗を示すのも意に介さずその手を彼の秘所に進めた。

「あぁ…ッ!」
「すげ…あっつい…」

抵抗にあっているとはいえ、赤也ももう年頃の男子だ。
学校を卒業して以来体育の授業もなく体を動かす機会がめっきり減った蓮二に、赤也に勝てる術はない。

「いや…いやッ、赤也…!いたい…!」
「何言ってんだよ、痛いわけねーだろ?」
「だめ…!赤…也…」
「だめ?そんなこと、此処は言ってないぜ…ヒクヒクして俺の指に絡みついてきてんじゃん」

見れば赤也の目は真紅に染まっている。
赤也の嗜虐性が高まっている証拠だ。

怖い…!逃げなくては…でも、体に力が入らない…

蓮二の思考は働いてはいるが、恋人の手によって快感に慣らされた体は思うように動かない。
それに赤也の手がしっかりと蓮二の急所を人質に取ってるのだ。
抵抗しようものなら、今の赤也なら容赦なくその手に力を込めるのだろう―――

「なぁ?あの眼鏡に何回ヤらせた?」
「ひ…!ぁ…」
「何回ヤらせたんだって聞いてんだけど?」
「い、や…!そんなの…ッ」
「…そっか、わかんねーほどヤられてるって?ははっ、アンタも好きモノだねぇ」

ぐちゅぐちゅ、と更にローションを垂らした指の数を増やされて、蓮二は泣いた。

「ほら、聞こえる?すげーエロいんだけど…」
「やめ、て…!赤也…!後生だから…!」

ちゅぽ、と名残惜しげな音を立てて指が出て行く。

「…あ…」
「そんな声出すなよ。今やるよ、アンタの大好きなヤツ」

嗚呼、そんな…!

蓮二は恐怖と絶望に目を見開いた。
赤也がジーンズの前を寛げて取り出したものは、幼い頃風呂に一緒に入った時とは比べ物にならない…
まさかあの赤也が、こんなに成長しているなんて―――!

幼少時代から知っている赤也だからこそ、余計に蓮二は戦いた。
そして期待に震えている己自身も隠しようがない…
蓮二自身の美しい淡い色のそれは今や天に向かって期待を持ってそそり立ち、震えていた。

「あ…ああ…」
「何?俺の見ただけで興奮してんの?アンタ超淫乱じゃん…それなら遠慮はいらないよね」
「あ…駄目…!あか、や…!あ、ああ…あぁあああぁッ!」

赤也の極太のそれが容赦なく蓮二の淑やかで慎ましい秘肉の蕾の中に捻じ込まれる。
蓮二は真っ白な背中の翼の名残である肩甲骨をくっきりと浮き上がらせるように背を逸らして赤也の凶暴なそれを受け入れた。

「あ…あつ…兄さん…!」
「あっあああ…赤也、だめ、だめ…抜いて…!」
「やだね…あの眼鏡には何回も入れさせてんだろ?」

赤也の目の赤さが増したように思える。

嗚呼、これは俺が可愛がってきたあの小さな弟じゃない…
立派な男であり、獣だ…

蓮二は体の中心を犯すその肉棒の熱さと大きさを身を持って感じながら往生際悪く手足を動かした。

「すげぇ…兄さん、中、すっごく熱くて気持ちいい…畜生、もっと早くこうすればよかった」

赤也は息をつくと蓮二の体が落ち着くのを待って荒々しく動き始めた。
突然の動きに蓮二の体はとてもついていかない。
引きつる体を労わろうともせずに動く赤也。しかし蓮二の表情には痛みや苦しみ以外の表情が見え隠れするようになっていた。
淫穴を出し入れされるたびにそこからは濡れた音がひっきりなしに聞こえる。

「あぁあっ、あっあっあっ…ああん!あか、やぁぁ!」
「ほら、兄さん、凄い…ッいやらしい音してるよ、聞こえる?」
「あっ…いやぁ!ぐちゅぐちゅ、言ってるのぉ…!」
「どこがぐちゅぐちゅいってるの?教えて、兄さん」
「はぁッ…ぁ…あかや、のおちんちんが…っはいってるとこぉ…!」
「そんなんじゃわかんねーよ、俺バカだからさ…ちゃんと言わないと!」
「れ、れんじ、の…お尻の穴ッ気持ちいいッ!」

赤也の満足げに笑う声が聞こえる。
だが快感に支配された蓮二の脳裏にはそんな声も届いていない。

「もう駄目だ、蓮二兄さん…ッイキそう…!」
「あっ、イッて…!蓮二の中でイッてぇ!」
「出すよ、蓮二…っ」
「出してっ中に…!中に、赤也のおちんぽみるくいっぱい出してぇ!!!!!」

赤也の逞しい肉棒が中で痙攣し、大量の精液を全て中に出し終える頃、蓮二の意識はもう此処にはなかった。

まるで美しく咲き誇った蓮が泥の中に散りゆくように―――――






突然家に届いた段ボール。

何やら嫌な予感がして宛名が父である幸村精市であるにも関わらず開けてしまった。
中を見た俺は予想通り―――いや、予想以上であった代物に思わず玄関の廊下にへたりこんだ。

中身は製本されたばかりと思しき本だった。
ただの本ではない。所謂同人誌という類のものだ。
しかし同人誌といっても文学の要素のあるアレではない。
そんなものは欠片もない、夏とか冬とかっていうか年中どこかしらで人がたくさん集まってくるところに売られているらしい方の同人誌だ。

『おにいちゃんを俺に頂戴』とかいうタイトルからしていかがわしいものを感じてはいたんだが、
表紙に描かれている絵がどうにも見覚えがある。絵に、というより描かれている被写体についてだ。
まっすぐな黒髪と伏した目の男が、癖の強い髪の男に組み敷かれている絵だった。

以前貞治が泊まりに来た時にそんなつもりもなかったのに見てしまった絵柄に酷似している。

恐らく…というより考えるまでもあるまい。
これは父さんと俺の恋人である貞治の書いたものであろう。

表紙だけでも不愉快極まりないのだからよしておけばいいものを、俺は迂闊にも中を開いてしまった。

斜め読みしただけでもこの内容…
しっかり全部読んだらどうなっているのか、想像するのも嫌だ。

大体何だ、この俺は…俺はこんな喋り方はしない。
何なのだ、この最後の…お…おち…いや、頭の中で言うのさえ憚られる!
美しい淡い色のそれって何だ!俺のは普通だ!
真っ白な背中の翼の名残である肩甲骨ってそんな描写必要か!?
真っ白な雪のような肌だとか、ちょっと俺に対する過剰評価が気にかかる。
秘肉だとか蕾だとか何なんだ…淫穴って何て読むんだ…
そもそも赤也はまだ小学生だぞ!そんな幼いうちからこんな妄想に使われるとは不憫でならない…

俺はとりあえず手に取ったその一冊を破いてみた。
が、まだダンボールの中には大量の出来立ての本が入っている。
一体何部刷ったのだか知らないが、これを全部破るのは骨だ。

俺はダンボールごと庭に持って行った。



「………蓮兄何してんの?イモでも焼くの?」
「この蒸し暑い時期にヤキイモですか?あ、キャンプファイヤーですね?」

ブン太と比呂士がリビングの窓から庭に下りて来ようとするので、睨みを利かせて止めた。
この本の中身を見られたくない…!

「『おにいちゃんを俺に頂戴』…ほー…これ、蓮兄と赤也かの?」

が、素早い上に俺の眼光があまり効かない雅治に、さっとダンボールの中身を一部攫われてしまう。

「雅治!」
「ああ、心配せんでもあいつらには言わんよ」
「そ、そうか…」
「蓮兄も大変じゃのう…これ、親父さんじゃろ?」
「ああ…それと貞治だ」
「…なぁ、何であんなんと付き合っとるん?」
「俺もわからない。明日にでも別れ話をしようかと思っているんだが」
「そうしんしゃい」

雅治は俺と喋りながらもぺらぺらと本の内容を確認している。
話の分かる雅治とはいえ、さすがに見られたくないんだが…

いや、俺が書いてるわけじゃないし俺の実際の姿じゃないんだから気にする必要はないんだろうが、やっぱり不愉快には変わりない。

「お。結構わかっとるのぅ」
「…何がだ」
「おちんぽみるくって、男が言われたいエロ台詞上位にランクインしてるぜよ」
「そんなランキングがあったこと自体初耳だし、俺は言われたくないぞ」
「そうじゃの。参謀は言う方じゃからの」
「雅治…お前ごと燃やしてやろうか」

心底うんざりしてライターの火をかちかちとしてやると、雅治はさっさと庭から消えようとする。

「雅治!本!」
「これ、誰にも言わんから一冊貰うぜよ〜!」

結局その一冊は雅治の手に渡り、俺はその後どうなったのか知る由もないというか知りたくなかった。



その後近寄って来ようとする赤也も開眼で止めてダンボールに火をつけた。が、ダンボールは燃えたが本は無傷だった。

父さんという相方がいる限り、貞治を殺そうにもきっと無理であろう。



 

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