君に薔薇薔薇






クララ:今度そっちに新しい執事喫茶出来るらしいやん。

銀騎士:なにそれ初耳

クララ:サイトだけ出来てたで。池袋やったかな。来週OPENやって。

銀騎士:ふーん

クララ:あれ、興味なし?

銀騎士:俺外出んし

クララ:そうなんや。たまには外出ないとカビ生えるで。

銀騎士:うっせえよwww

クララ:俺が関東住んどったら毎日アキバとブクロ通うんに、もったいないわ〜。

銀騎士:アキバよりブクロより仮想世界のがおもろいぜよ



チャット画面を縮小して、もうひとつウィンドウを開く。
池袋 執事
腐るほど出てくる検索結果。



銀騎士:店の名前なに

クララ:氷の薔薇とかなんとかやったかな。



池袋 執事 氷の薔薇
一件ヒット。
クリックすると執事喫茶らしからぬゴージャスな青い薔薇が画面いっぱいに広がった。
一瞬ブラクラかと思った。



クララ:めっちゃイケメン揃いやでぇ。



PC画面の隅の小さなチャット画面にクララのレス。
それを横目で見てstaffのコンテンツを開く。
別ウィンドウで開いたそれは、上から下まで確かにクララの言う通り美形揃い。
これはOPENしたら確実に人気店になるだろう。
ここまで外れ無しというのも珍しい。

「…これは、あいつのジャンルじゃのう」

一人の部屋で小さく笑い、俺は携帯を開いた。






『執事喫茶?』
「そう。お前さん好きじゃろ、イケメン」
『某が好きなのはショタだ』
「男には違いなかろ」

電話の相手は蓮二殿。
来週OPENの執事喫茶の情報は、まだ蓮二殿にも入ってなかったようだ。

『…お前は勘違いしている。ショタとイケメンは全く違う。イケメンなぞその辺のビッチ相手に中学二年の夏休みあたりで童貞を捨てた言わば俺達オタクと敵対すべき存在だ。その点ショタは…』
「分かった、俺が悪かった」

ほっといたらいつまでもショタ談義に付き合わされそうだったので、すぐに謝った。

「でも蓮二殿が撮影会とか行っとる子だって14歳以上じゃろ」
『あの子達は天使だ』
「そんなノリで見てみたらいいじゃろ。ほんに美形揃いじゃから損はないぜよ」
『…仁王がそこまで勧めるのなら見るくらいはいいが』

蓮二殿は渋々といった感じで「いいショタがいなかったらお前を外に放り出す」と言って電話を切った。
外に放り出されるのは嫌じゃ。
…でも俺は、きっと蓮二殿も気に入るだろうと踏んでいた。
だって半ズボンが二人いたから。






翌日、蓮二殿から興奮した声で電話がかかってきて、俺はほくそえんだ。

『仁王、あの店はなかなか良さそうだ』
「そうじゃろそうじゃろ」
『なんたる粒揃い。あそこまでのレベルはそうないぞ!』
「そうじゃろ。で、誰が気に入った?」
『脚は岳人だが、顔は若が好みだな。だが店長兼スタッフの景吾も相当いいし、少年っぽさが可愛いのは亮か。だが長太郎も捨てがたい…ジローは天然っぽさがあって可愛いし、侑士は正統派で絵になるな』
「………ウン、分かった。全員じゃな」

昨日の今日でスタッフを全把握した蓮二殿に若干引いた。
だが友人にいいものを紹介出来て喜んでもらえたことに単純に嬉しくなる。

『それで仁王、いつ行く?』

だが蓮二殿の言葉に俺は固まった。

……………は?今何言った、こいつ。

『初日の予約はギリギリで取れそうなんだ。バーもあるらしいから仕事帰りなら行けそうだ』
「ちょ…ちょ、待て。俺も行くんか!?」
『?当然だろう。…え?行かないのか?何故?』

何故も何も、俺は男にもショタにも執事にも興味がない。
こちらこそ何故、だ。
何故この男は俺が一緒に行く前提で話してるんだ。

『だって、お前が教えてくれたのだし、どうせなら一緒に行った方が楽しいだろう』
「嫌じゃ。俺ひきこもりぜよ?」
『たまには外に出ろ』

…クララと同じことを言う。
大体あんなイケメン揃いの店になんか行きたくない。
絶対「キモい」「ヒョロい」「男が来んなよ」とかの囁きがキッチンから聞こえてくるに決まってる。

『とにかく、予約はしておくからちゃんと初日の19時にいけふくろうの前に来るんだぞ』

俺は同年代の同性が最も恐ろしいのに!
だがそんなことを口に出せるはずもなく、モゴモゴ言ってるうちに電話は切れた。



「……………」



…教えるんじゃなかった。

何着て行こう。服なんてもう何年も買ってない。新しく買わなきゃ。でも服買いに行く時に着る服が無い。

憂鬱な気分のまま頭を働かせる。



………そうだ、とりあえずクララにお礼を言っておこう。
んで、仮想世界でS級モンスター倒してみんなにチヤホヤされよう。



俺は得意の現実逃避で考えることを先延ばしにした。



 




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