ネタ | ナノ

帰宅途中の大型スーパーに寄って買った化粧品が目の前にある。
口紅と、目元に色をつけるやつ。
他は手に取らなかったから、とりあえず指先に付けてみた。
ぽん、ぽん、と皮膚の上で弾ませると薄ら色が乗ってくる。
美的感覚に自信はあったが次第に自分の中の正解が不明確になっていった。
付着していないような気がして何度か重ねる、衝動に突き動かされていた。

息を吐いて、重い瞼を半分ほど開いて前を見る。

鏡に映るのは角ばった肩の、過剰な化粧をした男だ。
喉仏が影を落とし、コメディの一幕にしか見えなかった。

何度も綺麗だと言ったくせに、謙也の奴。

俺も、俺ならばと意地になっていたけれど、現実はこうだ。

瞳の周りがじわりと熱く、我慢出来なくなって化粧品を視界から消した。勢い良く飛んだプラスチックが無機質な音を立てる。


叱咤する妹の声がした。



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がっつり遅刻ですが誕生日祝いで財前を絡めていこうと思っていたはずなのに!!
白石部長が出張ってました。
若干病んでて…というか意味不明ですみません。久しぶりなのに´`

きみの言う綺麗の意味、は
2013/07/30
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