愛の微笑
「 なぁ、ワイズリーってさ… 」
…なの?
その言葉にワイズリーは啜っていたお茶を外へ遠慮なくぶちまけた。
「 うおっ、ちょ、汚いさ! 」
いきなりの事にぎょっとし、悪態をつくも傍らに合ったティッシュを差し出してくれるラビ。
ワイズリーはそんなラビの気遣いにも気付かずに放心した目でラビを見詰めていた。
え、今、何て?
"ワイズリーは__
ティキと付き合ってるんさ?"
だがそれも束の間、放心していた目は徐々に戸惑いの色が差して行き、瞳が揺れる。顔は先程とはうってかわって林檎の様に真っ赤に染まっていた。ワイズリーはぱくぱくと口を開け閉めさせ、まるで金魚の様。
「 な、ななななにを言っているのだ! 」
焦りと動揺が隠せないのか声が裏返って言葉も上手く発っせていないワイズリーにラビはくすりと笑いを溢した。
あれで隠してたつもりだったんさね…。
ティキはもろ見せつけるようだったケド。
「 あれで隠しているつもりだったんさ?多分皆もう知ってると思うけど? 」
「 …!? 」
戸惑いに揺れた瞳を見開きながらあわあわと一人慌てる生娘の様な態度を見せる可愛らしいワイズリーにラビの加虐心が擽られる。何時も澄ました彼だがこんな表情もするのかと驚き半分、得した感半分。もう少しいろんな表情を見てみたいと追い討ちを掛ける様に言葉を紡いだ。
「 あ、因みに言っちまうとナニの時、どっちがどっちかも知って
「 う、うわああああ、っ! 」
目を見開き、何故そんなこと迄知っているのかと言わんばかりの目。真っ赤な顔を更に赤くしては、はくはく、と何か言いたそうに口をひくつかせる。が驚きで声も出ないのだろう。遂には恥ずかしさに堪えられないのか声を荒げては発狂し、更に真っ赤な顔を隠すようぎゅっと服の裾を掴んでは俯く相手。
ラビは少し虐めすぎたかと内心反省。
だが、ティキが彼処まで夢中になるのも何となく分かった気がする。
気恥ずかしさに目を逸らし、俯いては、紅がほんのり愛らしく色付いた頬、戸惑いを隠せない表情。
何時も冷静で頭がキレる相手がこうにも慌て、顔を染め、取り乱し__。
あのティキが惹かれない訳が無かった。
_ティキも案外良い趣味してるんさね。
そう心で小さく呟けば気恥ずかしそうに目を逸らす相手を横目に先程差し出したティッシュで今にも溢れ落ちそうな涙を拭った。
「 何さ、泣くほどバレたく無かったのかよ? 」
ティキは今すぐにでも俺の物だと見せ付けたいオーラ満々だったのになぁ。
ちょっぴり苦笑しながら涙やら冷や汗やら吹き出したお茶やらで濡れた顔をそっと拭きながら問う。
独占欲が高いティキを選んだのが運の尽きだったな。と早くワイズリーに会いたくて堪らないとそわそわ、苛々しながら仕事をこなす相手の姿を思い浮かべては、ざまぁ、と舌を出し、思いっきり嘲笑ってやった。
ちらり、と視線を寄越せば此方をじっとり見てくる視線とぶつかった。
怒ってる…?
仮にも相手はノアの一族。怒らせて仕舞ったなら不味いなと思考を巡らせ、打破作を考える。
だが、そんなことをする必要は無かった。
逆に今度は此方が顔を赤く染める番だった。
「 だが、お主もカンダとやらと付き合っておるのだろう? 」
「なっ、何言ってっ、…!」
柄にも無く狼狽えて仕舞った。その反応に確信を得たのだろうワイズリーは先程の自分と同じように更に責め立てる。
「 たしか教団でせっぷ
「 あああああ、ち、違う!!見間違えさ!あ、あの時は偶々そう見えるような体制でっ! 」
「 まだ何も言ってないぞ? 」
大体その先がわかってしまった。
遮るよう先程の彼と同じよう声を荒げるもワイズリーはにやり、と意地汚く笑ってはまだ、何も言っていないと言う。
失敗した…此れじゃ隠してるのもろバレさ…。
ううう、と一人小さく唸り声をあげるも認める以外の選択は用意されていないのは丸わかりだった。
これ以上下手に反論して墓穴を掘るのもいけないと観念して諦めた様に溜め息をつく。
「 …そうさ。カンダ…ユウと付き合ってる。
ワイズリーが言ったように…、その、教団で…、き、キス…したさ…。 」
「 あ、因みに目撃者はジョイドだぞ。 」
彼奴、後でぜってーぶん殴る…!。
そう心に決めたのは言うまでもない。
ラビが内心怒りに震えているところ、すっかり何時ものペースを取り戻したワイズリーは再度お茶を啜っては熱い息を吐く。
ふるふると一人拳を震わせているラビを横目にワイズリーは新たな思考を巡らせていた。
カンダも確か男、だった筈。
ではラビも男と付き合って_?
正直有り得ないと思った。
だって今、目の前にいる彼は大層な女好きでストライクゾーンが寛大。本来敵であるルル=ベルにでさえ、もろ好みと抜かしていたのだから。
思わず首を捻る。
「 のう、、お主、大層な女好きだった筈じゃろう?
何、男の気でも合ったのか? 」
並び立てられる言葉はからかうようだが、極真面目に問う彼にラビは戸惑った。
いや、、その気が合ったとか無かったとかそう言うのじゃ無くて__
なんと言うべきだろうか、と今度はラビが首を捻った。
別に男が好きだとか、女が好きだとか、そう言うのでは無く、単純にユウが好きになった。其れ丈だ。其処に性別だとか、男だから好きになったと言う訳ではない。
敷いて言ってしまえば彼だからこそ好きになったと言ったら正しいのかも知れない。
と言うことで言葉では説明不可と分かったラビは簡単な例えを出した。
「 うーん、そう言う言葉では表せないさ、、。
じゃあ逆に聞くけど、ワイズリー。アンタはティキを好きになったのは何でさ?ワイズリーも男の気でも合ったんか? 」
そう切り出してやれば、分かりやすく眉が寄った。
ワイズリーは独り難しい顔をして考え込む。
其所でラビはやべっ、と漏らす。
彼は理論派だ。逆に深みに嵌まらせてしまったかも知れない、、
「 ワイズリー。なんでも其処まで考えなくても__ 」
「 分からん。 」
へ?とラビは情けない声を上げた。
するとワイズリーは顎に手を当て先程の難しい顔をして此方を見詰めていた。
「 分からないのだ、、ジョイドが何で好きかのう。 」
うーん、と頭を悩ませる彼にラビは笑った。
急に笑われたからか、む、と顔をしかめるワイズリーは何故笑う。と抗議の声を上げるがラビは笑った儘答えた
「 そう言うことさ。好きになるのに理屈なんかありゃしねーさ、何で好きなのかなんて分かる筈も無い。 」
ワイズリーは目を瞬かせ、暫く驚いた顔をしていたがふっ、と笑みを溢した。
ラビは目を見開く。
だって彼が見せた笑顔は今まで見せた中でも一番。
少し照れたように、でも嬉しそうに
少しだけはにかんで見せた笑顔は
ラビすらも目を奪われるほど。
ターバンで押さえられた髪をぐしゃぐしゃに撫でてやり、ラビは一言言った。
「 俺。得、しちゃったさ。 」
__飽きないほどに述べられる愛の詩は
風に乗って。
呆れる程に愛された彼へと届く。
不意に零れた微笑は
万物すらも魅了する__。
罪深き、だが、愛され続ける
『 愛の微笑 』
end....
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随分前から下記続けてた駄文。
はあ、ワイズリー可愛すぎ。( 末期 )
受けッ子組がいちゃいちゃ、ほのぼの
してたら良いな〜、って言う完全私得。
此の後、御互いの攻めに引き取られてわたわたなるんでしょうねえ。うふふふふ、←
因みに、何でノアとエクソシストが一緒にいるんだ
とは、言わないで上げてください、、( 小声。 )