立向居に円堂から連絡が入った。
また雷門に行く、と
そして、メンバーが雷門中に集まる。
「円堂から連絡が来たという事は、向こうはメンバーを集めたという事か」
「まずいね…僕達はまだメンバーが足りないのに」
険しい表情の風介とアフロディの会話を聞きながら、ヒロトは眉根を寄せて携帯を気にしていた。
カイについて調べているはずの砂木沼からは大した情報もなく、溜め息をつく。
その頃、
砂木沼は公共図書館に居た。
数年分の新聞を読み返し、何かカイに関する事がないかを調べていたのだ。
サッカーに執着しているのなら、何かしらサッカーに関係する記事にカイも関わっているかも知れない。
特にフットボールフロンティア関連の記事を中心に調べ、予選落ちしたチームについても事細かに調べていた。
「……ん?」
とある、記事が目に留まる。
地区予選の決勝間際にエースストライカーを事故で亡くしたチームの特集記事のようだ。
無名チームながらも、そのストライカーの実力は相当なものだったようで予選決勝まで行ったのだが、残念ながら敗退。
それ以降の試合でも大した実績は残していない。
「繰唆中…か」
亡くなったストライカーの写真、名前を見る。
「紺野…リク」
写真を見ていると、風介やアフロディから聞いていたカイの特徴と似ている部分があるが名前が違うし、第一このリクという選手はすでに亡くなっている…。
関係無いのだろうか…、
しかし、調べてみる価値はありそうだ。
「砂木沼?」
「!」
名前を呼ばれて、記事に集中していた砂木沼はハッとした様子で顔を上げた。
「改…と、御影のキャプテンか」
制服姿の二人は数冊の本を手に、砂木沼に近付いてくる。
「何をしているんだ?」
「あぁ…ちょっと調べ物をな」
砂木沼が資料にチラリと視線を走らせると、下鶴と杉森もそれにつられて見る。
「…繰唆中がどうかしたのか」
「知っているのか」
杉森の言葉に砂木沼がすぐに反応すると、杉森は少し驚いたように頷いた。
「あぁ…俺が1年の時に御影と繰唆で試合をした事がある」
「詳しい事を教えてくれないか?」
砂木沼はこれまでのいきさつを説明し、二人に協力を請う。
すると、下鶴と杉森は顔を見合わせ軽く頷いた。
そして下鶴が砂木沼を見て言う。
「…御影のデータベースになら詳細な情報があると思う」
ヒロトが何度目か分からない視線を携帯に向けた時、砂木沼からの着信が入る。
風介やアフロディもそれに反応して、ヒロトの応答に注目した。
ヒロトは険しい表情で何度か頷き、電話を切った。
「何か分かったのか?」
風介の問いにヒロトは眉根を寄せて首を傾げる。
「確かな事は言えないけど…カイに近そうな人物を見付けたそうだよ」
「…彼に関係者がいるという事?」
訝し気な表情で呟くアフロディに「さぁ…」と返し、ヒロトは溜め息をついた。
「まぁ、すぐに手がかりが見付かるとは思ってなかったけど…今は砂木沼に任せるしかない」
「あぁ」
「そうだね……僕達には今、別に集中すべき事がある」
そう言ってアフロディは校門の方へと視線を向けた。
「……来たみたいだよ」
「!?」
全員がアフロディの視線を追い、円堂の姿を確認した。
「円堂さん…」
立向居の声は、
円堂には届かない。