ボールを追う君の姿が

   大好きだったんだ…





Act.4 壊したいほど愛してる








━ ガコンッ


晴矢はホテルのロビーにある自販機からの音と共に膝を折り、取り出し口から飲み物を取り出した。

立ち上がって、部屋に向かいながらキャップを外して飲み始める。
廊下を歩いていてふと、視界に入る見知った顔に足を止めた。



「何してんだ?」

晴矢の声に、窓の外を眺めていた緑川は視線を晴矢へと移した。


「別に…何も」

「…お前さ、楽しいか?」

「楽しい?」

質問の意味が分からずに、首を傾げる緑川に近付いて先程まで緑川が見ていた窓の外を見る。
大して興味をそそられるものはないな、等と思いながら口を開いた。


「今、サッカーやってて楽しいか?」

緑川がジッと自分を見ている気配は感じるが、あえて外から視線は外さない。
ややあって、緑川はまた「別に」と答えた。


「皆がやってるし…カイがサッカーをやれって言うから」

「そうか」


晴矢は一言、そう答えて「足手まといにはなんなよ」と言い残して、その場を離れた。

緑川は晴矢を見送る事なく、また窓の外へと目を向けた。


「……面倒臭い」








豪炎寺はベッドに横になり、瞳を閉じていた。
しかし、眠っている訳ではなく、また次に戦う事になるであろう雷門の事を考える。


アイツらはメンバーを集める事が出来ただろうか、
少しは強くなっていてもらわないと困る、
もっと楽しませてくれ、

もっと、もっと…




「ふっ…」

豪炎寺は微かに笑みを零して起き上がる。


「…楽しみだ」







「特訓なんてやっているのか?」

「…いや」

ホテルの近くにある広場で、壁に向かってボールを蹴っていた辺見は鬼道に声をかけられて動きを止める。

「ただ…暇だったから」

「成神はお前がこちら側に来て相当なショックを受けていたようだが?」

「……関係ない」

僅かに表情を曇らせた辺見を鬼道は鼻で笑う。

「その割にはアイツの事を気にしているようだ」

「うるさいと感じてるだけだ」


ギリッと奥歯を噛み締め、鬼道を睨みつける。


「俺は…サッカーを続ける事が出来るならそれで良い」

「頂点に立たなければ意味がない」

鬼道のその言葉に、今度は辺見が鼻で笑って返した。

「勝手にすれば良いさ、俺には興味ない」

そう言ってボールを手に持つと、ホテルに向かって歩き出した。


「ただ」


少し離れた所で立ち止まって、鬼道に背を向けたまま言った。



「ただ…裏切る者がいなければ、それで良い」

「………」


鬼道からの返答を期待する訳でもなく、再び歩を進めた。


鬼道は軽く溜め息をついて「甘いな…」と呟くだけだった…。





カチカチと携帯を弄る円堂の側で風丸は静かに読書をしていた。
特に会話はないが、それで良い。

円堂の側にいて、円堂のために働く事が自分の全てだ…誰に何を言われても関係ない。必要とされている内は己の全てを捧げる…ただ、それだけ。



円堂は携帯を閉じてベッドの上に放りなげた。
それに反応するかのように風丸が顔を上げて円堂を見る。目が合うと、円堂はニヤリと笑った。


「準備が整いそうだ…またアイツ等と試合できるぞ」

「…そうか」

大したリアクションも見せずに頷く風丸に円堂はつまらなそうに言う。

「何だよノリ悪いなぁ、楽しみじゃないの?」

「俺は…ただ、お前と一緒に居られるならそれで良い」

「その為にはサッカーが必要なんだぞ?」

「分かってる…だから、サッカーは続ける」


目を伏せる風丸に円堂は「ははっ…」と軽く笑う。
そして、その手から本を取り上げて顔を上向かせるとキスをする。


「ん…」

抵抗などする訳もなく、おとなしく受け入れる風丸に更に笑いが込み上げてくる。
顔にかかる風丸の長い前髪をサラリと流しながら円堂は微笑む。


「お前の身体も結構好きだぜ?」


「………うん」



そう言われて、初めて微かに微笑む風丸が憐れで愛おしい。
クスクスと笑いながら、またキスを仕掛ける。



近い内に行う試合の事を考えながら…、




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