「俺は決めた!!」

辺見はガタッと立ち上がって拳を握り締めた。

時は放課後。場所は帝国学園の寮、ロビー兼談話スペース。


辺見の宣言に、各々好きな事をしていた佐久間、成神、咲山が辺見を見た。


「決めたって…何を?」

咲山の問いに辺見はストンと椅子に座り直して視線を泳がせる。


「えっ…と、あの…」

「気持ち悪ぃな、何だよ」

最初だけ勢い良かったのに、その歯切れの悪さに佐久間がイライラと聞けば、辺見は俯いて小さく何事かを言った。


「はい?何ですって?」

全く聞こえない答えに成神が若干、大きな声で聞き返した。


勢いよく宣言したものの、3人の注目に辺見は段々と気後れしてきたが、それでもやっと顔を上げて答えた。


「告白…しようかと思う」

「へぇ、ついに源田先輩に告白するんですか?」

「そう、ついに……って、何で相手が源田だって分かるんだ!?」

一度頷いた辺見は成神に驚きの表情を向けたが、驚いているのは辺見だけだ。


「え…?もしかして、お前達…」


「いや、逆にもしかしてお前…気付かれてないと思ってたのか?」

佐久間が心底呆れた声を出せば、咲山も溜め息をついた。


「あれだけ“恋してます”っていう表情で毎日、源田を見つめてたら嫌でも気付く」

「なっ…な…」

あまりの事実に言葉も出ない。
まさか、周りからそのように思われていたとは…、


しかし、



「え…ちょっと待て、という事は源田は俺の気持ちに気付いてるのか?」

「あー、それはない。源田はお前が自分にガン付けてるとしか思ってない」

「え?」

「先輩があんまりにも睨む…もとい、見つめるから、むしろ嫌われてると思ってるみたいですよ」


「そ…そうなのか?」


さっきから新事実ばかりで辺見の思考回路は追い付かない。

頭を抱えて唸り始めた辺見に3人はニヤリと笑う。


「しかし、まぁ…辺見がやっとで告白する決心が付いたのなら俺達が協力してやる」

「え?」







「という訳で、“辺見が源田に告るのを手助けして何とか成功させてやろう大作戦”」

「略して“手助け作戦”」

「略しすぎて分からん」


「…………」


ノリノリの3人と違い、辺見は凄く不安そうな表情だ。


そんな辺見に佐久間はにっこりと笑った。


「まずは俺の作戦な」






佐久間の作戦

『登校途中に曲がり角でぶつかってキャッ、教室で見つける“アイツは今朝の…”から始まる恋の予感♪』


「古い」

「ベッタベタですね」

「王道が一番。そら行け辺見!!向こうから源田が来るぞ」

「え、今は登校途中じゃな…」

佐久間に背中を押されて仕方なく小走り。
寮内の廊下の角でタイミングを見計らって、わざとらしく源田にぶつかる。


「わっ…」

「あ、ごめ…」

「いや、辺見は大丈夫か?」

「………あぁ」







「……考えてみれば、既にあの二人は顔見知りなんですよね」

「大前提からして駄目じゃないか」

「そうか、盲点だった」

「……源田、格好良かった」

『……………』





咲山の作戦

『不良に絡まれる辺見を源田が助ける。か弱い辺見を守らなきゃ、そこから始まる恋の予感!!』


「お前もなかなか古いよ」

「これもまたベタですね」

「不良役はこちらで用意した」

「不良役っていうか、本物…」


『咲山さんのお願いッスから!!』







「源田っ、向こうで辺見が不良に絡まれてる」

「何だって?すぐに先生に知らせ…」

「あーっ、あーっ、それは俺がやっておきます!!」

佐久間と成神に誘導されて源田登場。


「辺見っ、大丈夫か!?」

「何だテメェ、やんのか?」

源田に殴りかかりそうな演技の不良役。

源田が危ない!!



「ジャッジスルーV2!!」


「ぐあぁああっ!!」



「……はっ!?」

「辺見…お前、強いな」

「いや………ははっ」





「何でお前が倒してんだよ」

「…すまん」







成神の作戦

『心のこもったラブレターで源田先輩の心をわしづかみ!!』


「これも王道だろ」

「“わしづかみ”て」

「恋の予感なんて遠回りすぎるんですよ。すぐに恋人にならなきゃ」

「俺、ラブレターなんて書けない」







「という訳で、我がネオジャパンが誇る筆まめな砂木沼さんにラブレター作成を依頼しました!!」




『拝啓 源田幸次郎殿

春光天地に満ちて快い時候、貴殿におかれてはますます…


中略


恋文などを書くのは幾分か己には不釣り合いと思いながらも、この胸の内を貴殿に承知してほしく筆をとり…


中略


乱筆乱文ご容赦願う。
以後もご自愛のほど祈り申し上げる 敬具』





「長ぇよ」

「どこの文豪だよ」

「…9割、言葉の意味が理解出来ない」


「んー、渡す前に失敗ですね」






「もう、いい」

辺見の呟きに3人の視線が集まる。


「とりあえず、手伝ってくれたのはありがとう。でも、自分で直接“好きだ”って言うわ」

「…ん」

「ま、それが一番だな」

「頑張ってください」


3人に励まされ、辺見は力強く頷いた。






「源田!!」

「ん?」

「す…す……」

「す…?」






「スナフキンって、今どこにいるんだろうな!?」

「……さぁ?辺見、ムーミン好きなのか?」

「あ…ぅん」







「あーぁ…」

「これは暫くは無理だな」

「次はどんな作戦でいきます?」



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