※微裏注意
晴矢の部屋にて。
晴矢はベッドに転がって雑誌をめくっている。
そして、本来ならばこの空間にいるはずのない風介は晴矢の勉強机に肘を付き、組んだ両手の指の背で額を支えていた。
物凄い暗いオーラを発しているのだが、晴矢は完全に風介をいないものとして扱っているようだ。
「晴矢…私の話を聞いてくれないか?」
「お断りします」
ポツリと呟いた風介の声を、雑誌から目を離す事なく切り捨てる晴矢だが風介には何の意味もない。
「最近、需要に供給が追いついていないと思うんだ」
「あ、今度駅前のスポーツショップがセールだ」
晴矢は「忘れない内にスケジュールに入れておこう」と、携帯を弄り始めた。
「晴矢…少しは言葉と言葉のキャッチボールをしてみても罰は当たらないと思う」
「俺、サッカー少年だからキャッチボールはしないんだ…まぁ、可哀相だから聞いてやらなくもない」
「セックスしたい」
「……いきなりデッドボール投げてくる奴と、どうやってキャッチボールするんだ?」
晴矢が持っていた携帯がミシッと軋んだ音を立てた。
風介は椅子をクルリと動かしてベッドの晴矢を見ながら『信じられないよ』というように上を仰ぎながら溜め息をつく。
「私が晴矢と身体を重ねたいと思う需要に、晴矢の供給が全く追いついていない」
「……因みにどのくらいの頻度をご所望で?」
「…週7?」
「凄いな。一日一戦……ってアホかっ!!」
「馬鹿な…一日3回はイく」
「聞いてねぇよ!!そういう問題でもねぇし!!つか、どこの絶倫だお前は!?」
身体を起こして雑誌をバシッと床に叩き付けて怒鳴った晴矢は、ベッドの上で膝を抱える。
「もうヤダ…何なのコイツ?ツッコミ疲れる」
「何だと?それは私の死活問題だ」
「あえて言う…そっちの“突っ込む”じゃねぇよ」
「私はもう我慢の限界なんだ」
「そうか、俺もだ」
「ならば話は早い」
「違う違う違う!!だからお前の考えとは真逆だっての!!乗ってくんなっ!!」
ガタッと椅子から立ち上がった風介は晴矢を押し倒してその上に跨がる。
「私達、最後にしたのはいつだ?」
自分を押し退けようとする晴矢の腕を掴んだり、払ったりの攻防を繰り返しながら聞くと晴矢は暫し考えて「…5日くらい前?」と答えた。
「正確には5日と4時間35分だ…こうしてる間に36分」
「お前、怖いよ」
晴矢のドン引き具合も何のその、風介は後ろ手に晴矢の中心に触れて布越しに愛撫する。
「ちょっ…ばかっ、やめろ」
ついに強行手段に出た風介に晴矢は青ざめて暴れるが、風介が何をしてくるか分からないので激しくは抵抗出来ない。
「ふふっ…お前もその気になってきたじゃないか」
明らかに風介の手に感じる感触の変化に怪しく笑えば、晴矢は舌打ちして抵抗をやめた。
「あー、もう…分かったよ」
「本当かっ」
風介が犬なら耳がピンッと立ち、盛大に尻尾を振っているであろう。
そんな明るい表情に晴矢は溜め息をついた。
「その代わり、ゴム使わないぞ?5日前ので切れたから」
「あぁ、もう今日は中に出してくれても構わないから」
「…マジで?」
首筋にすりすりと頬を擦り寄せてくる風介の頭を軽く撫でてから、態勢を入れ替えて風介を見下ろす。
「後で文句言うなよ」
「勿論だ。男に二言はな…ぁっ…」
「はいはい、もう喋らずに喘いでるだけで良いからなー?」
風介の身体を撫でながら晴矢はちょっと申し訳ない気持ちになる。
この5日間、風介に触れなかったのはセックスをしたくなかった訳ではなくて単にゴムを買いに行くのが面倒だっただけだ。
そのおかげで、貴重な中出しの許可までいただけるとは…、
これは暫くゴムを買いに行くのはやめようか等と、打算的な事まで考えた。
「ぁっ…はる、やっ……あぁっ…」
「ヒロト…お前、ゴム持ってるだろう?それをよこせ」
「えー?でもサイズが違うかも♪」
「そうか、お前…晴矢には敵わないか…砂木沼は持ってるかな」
「果てしなく失礼だね、君」