「まだ人数が足りない」

カイはホテルの自室にて、備え付けの机を指先でトントンと軽く叩く。

その表情は暗く、どこか切羽詰まっているようだった。



もっと強いチームを作らなきゃ…
もっと強い選手を…

大丈夫、僕なら出来る


ずっとサッカーを続けられる




カイは紺碧の瞳を隠すように閉じ、胸元で拳をギュッと握り締める。



「ずっと…一緒だよ」


僕がサッカーを続ける限り、
僕達はずっと一緒、


そうだろう?





「……リク、」



小さく呟いた…。
その声はカイ以外には誰も居ない部屋に溶けて消える。




ふと、カイの耳に届いたノックの音にカイは目を開く。

訪ねてきたのは、最近になって仲間になった土門だった。


「土門くん、どうかしたの?」


先程までの暗い表情は全くなく、にこやかな笑顔で土門を迎えた。

土門は質問に答えず、数枚の紙をカイに差し出した。


「…?」


カイはそれを受け取り、書かれている内容に目を通す。
次第に笑みを広げ、クスクスと笑い出した。


「さすが、情報を集めるのは得意なんだね」


土門はカイの言葉に、自分の言いたい事は伝わったのだと理解すると無言で背を向けて歩き出した。


カイはそれを見送った後に再び、資料を見る。


そこには、海外で活躍する選手が親善試合の為に来日するという情報が載っていた。
海外の新聞の情報なので、まだ日本ではあまり大々的には告知されていないのだろう。


「出かける準備をしなきゃ」

カイは嬉しそうな声でそう言った…。








京都、漫遊寺。
今日も木暮を叱咤する声が響いていた。


「木暮!!またお前はしょうもない悪戯を…」

「ウッシッシッシ、引っかかる方が悪いんだよーだっ」

垣田の叱責にも木暮は調子を崩さずに、舌を出して「ベーッ」と挑発してから駆け出す。


「木暮!!待ちなさい!!」

「やなこった!」

身軽にぴょんぴょん跳ねながら、その場を逃げ出して「ウッシッシ」と笑う。


「暇だなぁ…次はどんな悪戯しようかなぁ」

等と頭の後ろで手を組み、歩きながら空を見上げる。
青空が広がっていて、その眩しさに目を細める。

人の気配を感じて視線を前に戻すと、見知った人物が立っていた。





「…瞳子監督?」

瞳子は木暮に名を呼ばれると、口を開いた。


「木暮くん、迎えに来たわ」

「え?」

「貴方の力が必要なの」






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