ヒロト始め、元エイリアTOP5はスーパーマーケットをウロウロとしていた。
なぜ5人揃って買い物をしているかと言うと、ソレは数十分前に遡る。
「お前ら集合しろ。そして私の話を聞け」
砂木沼の言葉に、元エイリアチームのキャプテン達は素直に集まって綺麗に横一列に並んで座った。
不満げな表情を浮かべながらも晴矢までもがおとなしく従うのは、今日は砂木沼が食事当番なので逆らうと恐ろしい報復が待っているからだ。
「話って?」
代表してヒロトがそう聞けば、砂木沼は「うむ」と腕を組んで目の前に並ぶヒロト達を見下ろす。
「皆で買い物に行くぞ」
「夕飯の買い物か?緑川一人連れていけば良いだろう」
風介がそう言うと、緑川はムッとした表情を風介に向けたが「まぁ、それくらいなら」と砂木沼を見た。
「夕飯の買い出しくらいなら手伝うよ?」
「いや…まぁ、それもあるが。お前ら今日が何の日か知っているか?」
「?」
「ホワイトデーだ」
「………」
砂木沼の口から、その見た目にはそぐわぬ言葉が発せられ、ヒロト達は一瞬「ホワイトデー?」と首を傾げた。
「な、何だよ…お前ホワイトデーやる相手いるのか?」
晴矢が恐る恐る聞くと砂木沼は無駄なオーラを振り撒きながら、言った。
「お前ら…バレンタインには瞳子さんから何ももらわなかったか?」
「…あ」
緑川は何かを思い出して声を上げる。
「チョコもらった」
「そう言えば…」
風介も口元に手を当てて思い出す。
確かに、一ヶ月前のバレンタイン。瞳子からチョコをもらった記憶がある。
「ならば、お返しをするのは当然だろう…何か質問は?」
「……」
晴矢が無言で手を挙げると、砂木沼はビシッと晴矢を指差した。
「却下」
「何でだよ!?」
「…冗談だ」
「砂木沼…っ、冗談を言える様になったんだね」
「砂木沼さん、その調子ですっ」
「ここは無視するという選択肢もあったな」
感極まって泣きまねをするヒロトの側で緑川がグッと拳を握り、風介は腕を組んで冷静に分析する。
「お前らな…俺だって泣きたくなる時あるんだぞ?」
「よし、買い物へ行こう」
「本当に俺の質問聞かないのかよっ!!」
どうせ今日の砂木沼には逆らえないし、瞳子にホワイトデーの贈り物をするのにも異論はない。
という訳で、冒頭に戻る。
「ホワイトデーって何をあげるんだ?」
「チョコじゃないのか?」
「チョコはバレンタインでしょ」
「あげるものによって意味が違うらしいよ」
「何だソレ、面倒臭ぇ」
砂木沼以外の4人はお菓子コーナーをウロウロ。
砂木沼は別で夕飯の材料を探しに行っている。
「晴矢、私はアイスが食べたい」
「そうか。ヒロト、俺はコーラが飲みたい」
「ねぇ、緑川。アイスとコーラと…俺はオレンジジュース。あと、緑川が欲しいものを砂木沼に伝えてね?…ほら、戻ってきたよ」
まるで伝言ゲームのように回ってきた情報を、緑川は忘れない内に砂木沼に伝えるべく「砂木沼さぁ〜ん」と駆け寄り、砂木沼と共に戻ってきながら指折り数えつつ言う。
「あのね、アイスと、コーラと、オレンジジュースと……大福!!」
「うむ」
「砂木沼って、緑川からのおねだりだけは聞いてくれるよね」
「つか、大福って…ジジィかよ」
「お前ら、何を渡すか決めたか?」
砂木沼は手ぶらの3人を見て「まだ決まってないのか」と、若干呆れた表情を見せた。
「そうは言ってもね、お菓子ってたくさん種類あるし」
「あげた菓子によっては意味が色々あるらしいぞ」
それを聞いた砂木沼は暫く考え、
「では、全員が違う種類にすれば良いだろう」
と、提案した。
「なるほど」
ヒロトは頷き「じゃあ、俺はチョコ」と、瞳子がたまに食べているのを見かけるお菓子を手に取った。
「んじゃ、俺はクッキー」
「…飴」
「あー、ガム?」
他にも数種類、それぞれ適当にお菓子を手に取って砂木沼を見る。
砂木沼は迷った後にゆっくりと手を伸ばした。
「……マシュマロ」
「ぶはっ!!」
晴矢が盛大に吹き出し、ヒロトと風介は堪えた結果、咳込む。
緑川だけは「砂木沼さん、何か可愛い〜」とケラケラ笑っていた。
「…この大量のお菓子は何?」
自身の机にばらまかれたお菓子の山に瞳子は首を傾げ、そのお菓子の山に埋もれたカードを見つけると笑顔になる。
そこには、様々な筆跡と性格の表れる文章で瞳子への想いが書かれていた…。
『いつも ありがとう』