生まれて初めて告白したら

 生まれて初めてフラれました…





「ぐすっ…ふぇっ……」

「まぁ…元気出せよ」


鉄塔広場の樹の下にうずくまって、膝を抱える吹雪の側に立っていた染岡は気まずそうに声をかけた。


「染岡くんには分からないよ…僕は今までフラれた事なんてないのに、フラれ慣れてるであろう染岡くんに僕の気持ちなんて」

「……たまにお前の顔面にボールを蹴り付けたくなる時があるな」

「しかも豪炎寺くんのキャラまで盗もうと…」

「してねぇよ。アイツと違って俺のは私怨だよ」

「尚更悪い…」

「つか、お前が“フラれたから慰めてくれ”って呼び出したんだろうがよ!!」

「“元気出せ”なんてありきたりな慰め方!!染岡くんなんて世間に流されて、ゆるふわ愛されボールで遊んだ後にお洒落なオープンカフェで和スイーツ(笑)でも食べてれば良いんだ!!」

「食わねぇよ!!つか何だよゆるふわ愛されボールって!!」

染岡がイライラとした様子で怒鳴ると、吹雪は顔を上げて涙に濡れた頬を乱暴に拭った。


「…まぁ、告白してOKを貰えるとは思ってなかったんだけどね」

急に真面目になった吹雪に染岡は上がった肩を下げ、声も落とす。
そして、そのまま腰を下ろした。

「なんつーか、本気だったんだなぁ…」

「当たり前でしょ、そうじゃなきゃこんなに泣かない…あーぁ、女の子の扱いなら慣れてるのになぁ」

「そうか、しょうがな……ちょっと待て」

染岡は“はて?”と首を傾げた。
そう言えば、吹雪が誰に告白したかは聞いていなかった。


「お前…誰に告ったんだ?」

「……」

「お前、今“女の子の扱いなら慣れてる”って…」

「……男だよ」

「あぁ…まぁ、そういう問題は人それぞれだからな…因みに相手は」

「…アフロディくん」

「そうか…」

まさか男相手の告白だとは思っていなかった染岡は頬を掻きながら、言葉を探す。


「好きだって言ったらさぁ…“何が?”って聞かれて、はぐらかされた」

「は……?お前…それ」


単に伝わっていないだけでは?
ポカンと、吹雪を見つめていた染岡は『コイツはもしかしたら馬鹿かも知らん』などと考え始めた時に、吹雪が「…喉渇いた」と染岡を見る。


つまり、買ってこいと…
染岡は溜め息をつきながらも立ち上がって自販機へと向かった。


そう言えば、何を買うか聞いてなかったなと思いながら適当にお茶を買った染岡に近付く人物…、





「…はぁ」

吹雪は再び、膝に顔を埋めていた。
すると頭に感じるペットボトルの重み。手を伸ばして受け取り、顔を上げる。



「……ヤクザが天使に変わった」

それを聞いたアフロディはクスクスと笑う。


「染岡くんが怒るよ…それに僕は天使じゃなくて神さま」

「…そうか、知らなかった」

「僕も知らなかった」

「?」

「僕はいつの間に君をフッたの?」

「…え?」

「染岡くんから聞いたよ…ごめんね。まさか愛の告白だったとは思わなかった」

「あっ、あ…愛って」

ここで、やっと自分の告白が通じてなかったと気付いた吹雪は顔を赤くして口ごもる。


「違うの?」

「違わない…けど」

アフロディは吹雪の前にしゃがんでニコッと笑う。

「可愛いね、君」

「かわっ…?」

「僕、可愛い子大好き」

「……っ」

アフロディの整った顔が近付き、触れるだけのキスを貰う。

ボンッと音が付きそうなくらい真っ赤になった吹雪に、アフロディが再び笑った…。







生まれて初めての恋人と

 生まれて初めてのキスをしました…



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