円堂達が私服だった為に、立向居達は雷門のユニフォームを身につける。


混成雷門のチーム対円堂のチームの試合が始まろうとしていた。



「人数も少ないし、時間も15分の前半と後半な…カイ、審判よろしく」


円堂はさくさくとゲームの段取りを決めていく。それは一見していつも通りの光景だが、やはり纏う雰囲気は別物で雷門チームはピリピリとした空気に包まれていた。





「…まさかお前と同じチームになるとはな」

「ふん…足手まといにはなるな……と、言いたい所だが、今回は内輪揉め等している場合ではない」

「あぁ、そうだな」

雷門チームは風介と染岡の2トップ。
円堂チームはどうやら豪炎寺と晴矢の2トップらしい。


「あの馬鹿…」

風介は晴矢を見つめて小さく呟いた。
側に居た染岡には聞こえたらしく、チラリと風介を見る。

その険しい表情には怒りや戸惑いの中に、僅かに悲しみが感じられて染岡はグッと拳に力を入れた。


絶対に…負けられねぇ、




「それじゃあ…始めるよ」

カイの合図で始まる試合。

雷門チームのキックオフで始まり、風介が上がる。

「ははっ、お前と勝負する事になるなんてな」

晴矢が笑いながら風介の行く手を阻む。


「くっ…」

それ以上進む事が出来なくなった風介は染岡へパスを回す。

左サイドから上がり、ゴール目指す…が、



「だぁめ」

すぐに吹雪が目の前に出てくる。

「!」

「抜かれたらキャプテンに怒られちゃう」

にこっと笑った吹雪は染岡からボールを奪おうと、技を繰り出した。



「アイスバーグクロス!!」

「うわぁっ!!」


「!!?」


吹雪の新しいディフェンス技は攻撃性が増していた。
まるで幾つもの氷柱に道を塞がれてしまった様な感覚に陥る。

片膝を付いた染岡の横をボールを奪った吹雪がすり抜ける。


そのまま風介やアフロディを抜き、一気にゴール間近まで上がってきた吹雪。

「くっ…」

ウルフレジェンドを警戒した立向居が若干腰を落として身構える。


「久しぶりだなぁ…」

吹雪はニィッと笑うと小さく呟いた。





「さぁ…出番だよ」



吹雪の目付きが変わる。
ダンッとボールを一度上に上げ、自身は深く体勢を落とした。


「吹き荒れろ…」

周りの空気がキン…と張り詰める。

「えっ…」

立向居は思わず力を抜く。

「まさか…」


上がってきた染岡も足を止めて吹雪に注目した。



「エターナルブリザアァーードッ!!」


吹雪の凄まじいシュートが立向居に迫る。
立向居はそのシュートを正面から受け止めたが、そのままネットに叩き付けられてしまった。


そんな立向居を見て吹雪は「ふんっ…」と笑う。


「どうしたよ立向居、動きが悪くなったんじゃねぇの?」

「アツヤ…なのか…?」


染岡が呟く。
アツヤの人格はもう出てくる事はないと思っていた。

早々に得点を決めた吹雪に円堂は満足げに口端を上げた…、
風丸は得点を得た事よりも、円堂が吹雪に関心を向けた事に苛立ち、険しい表情を吹雪に向ける。



「………」

立向居は驚きに目を見開いたまま吹雪を見つめた。
吹雪はふと笑みを消すと、立向居に近寄って側に転がっていたボールに手を伸ばした。


その時、




「…頼む」

吹雪が立向居にだけ聞こえるように囁いた。



「兄貴を……助けてやってくれ」

「え…?」



ボールを持った吹雪は背を向けて戻る。
数歩歩いて立ち止まると、振り返る。



「次は取れると良いね」

にこっと微笑む吹雪は既にアツヤの人格ではなかったが…、


立向居は混乱していた。



吹雪さんは…完全におかしくなってしまった訳じゃない。
少なくとも、アツヤさんの人格の方はこうなってしまった事を良く思っていない…。




「何だ…今のは」

風介が眉をひそめた。

「まるで人が変わったような…」


いや、風介がエイリアとしてイナズマキャラバンと敵対していた時にも時々このような事があった。


「彼は元は二重人格だったらしいよ…事故で亡くなった弟の人格らしい」

キャラバンに居た時に吹雪の事を聞かされていたアフロディがそう言う。


「そうか…しかし、“元は”という事は今では人格は統一されているのだろう?それがどうして…」

「さぁ、それは僕にも分からないけど」


アフロディは自分のポジションへと戻る吹雪に目を向けた。


「DFながら、FWとしての能力も高まったという事は間違いないね」




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