まだだ…
まだ、俺は強くなりたい。誰よりも、
あいつみたいな…
強さが、欲しい
「ぐあっ!」
目の前の男が倒れる。一瞬の間を置いて地面に落ち、転がるボール。
風丸は感情の読み取れない暗い瞳をそのボールに向けた。
「今日はこのくらいにしておきましょうか」
背後から聞こえた笑みを含む下卑た響きの声に風丸はゆっくりと振り返る。
にたり、と厭らしく笑うのは剣崎という男。風丸に力を与え…そして、大切な何かを奪っていった……
いや、違うな…
風丸は歩き出した剣崎の後に続きながら自嘲する。
大切な何かを放り投げたのは自分の方だ…その前に、果たしてアレは本当に大切なものだったのか?
強さを得るためには邪魔なものだったんじゃないのか?
そこまで考え、そして考えることすら面倒になった風丸は頭の中に過ぎる彼の笑顔を消し去った。
「経過は順調のようですね」
「問題ない」
剣崎の問いというよりは確認の言葉に簡潔に返す。エイリア石の影響で体調が優れないなどという副作用はないようだ。むしろ力が漲っているのが自分でもよく分かる。
「少人数相手では貴方の足元にも及ばないようで」
ククク…、と笑いながら先ほどの『実験』の結果を簡単にノートにまとめた剣崎は「さて」と風丸に笑いかける。
「今日は貴方に会わせたい人達がいるのですよ」
「会わせたい人達?」
「えぇ、貴方と共に戦う仲間です」
そう言って剣崎が示す先にはかつて、同じフィールドで共に笑いあった仲間たち…
「お前たち…」
「彼らもまた貴方と同じように力を求めたのです」
剣崎のその言葉に風丸は「ふ…」と小さく笑みを溢す。そして、それはやがて大きな笑いに変わっていった…。
「ふふふ、はは……あははははははっ!!」
天を仰ぎ、おかしくて堪らないというように笑う。
見ろよ、円堂。
これが力を求めるということだ。
お前が言うような特訓だの、仲間との絆だの…そんなもの何の役にも立たなかったじゃないか。
「さて、そろそろあの子供達が雷門中に戻ってくる頃でしょう」
やっぱり俺は間違っていなかった。
だって、こんなにも俺と同じくエイリア石に頼って力を得ようとする者がいる。
そうだ。こんなに簡単に力が入るなら利用しない手はない。
「我々もそろそろ向かいましょうか」
何も間違っちゃいない。普通のことだ。
あぁ、楽しみだな…俺たちと対峙した時のお前の顔を見るのが。
今まで、仲間たちと力を付けてきたのだろう?絆を深めてきたのだろう?
「世界に貴方達の力を見せ付けてやりましょう」
それを、全部俺がぶち壊してやるよ
そしたらきっと、お前も分かってくれるよな?
この力の素晴らしさ…きっと、お前も俺と同じ力を望んでくれる。
「彼らの名はダークエンペラーズ」
だからさ、円堂
「風丸…お前、どうして……何でこんな」
また、俺と一緒に…
「サッカーやろうぜ?…円堂」
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香織さま
ありがとうございます!風丸の闇堕ちと言えばDEが印象強すぎて…あの時の風丸の心境の妄想といいますか、このような形になってしましました。
大変、消化が遅れてしまいまして申し訳ありません。こんなんでよければ貰ってやってください。
リクエストありがとうございました。