「………」
カイはメンバー達の催眠が解けていくのを見てフラリと立ち上がる。
ごめんね、リク
僕はまた…リクのサッカーを守れなかったよ
そのままその場を離れようとしたカイを呼び止める声に振り返ると、円堂が笑顔でカイを見ていた。
「どこに行くんだ?試合はまだ終わってないぞ?」
「え?」
気づけば、他のメンバーもカイを見ていた。
「早くしろよ。せっかく俺がFWを譲ってやったんだから活躍してもらわないと」
「何をしているんだ。ポジションにつけ」
「でも…僕は、君達を」
「僕と君って似てるなって思ってた」
「…吹雪君」
吹雪はニコッと微笑んで己の胸の辺りを押さえる。
「僕とアツヤは二人で一人…二人なら完璧になれるって」
「…」
「でもね、違うんだ。二人で完璧なんじゃない。皆で完璧になるんだ」
「皆で」
「そう」
吹雪は頷いて明るい表情で言う。
「だって僕達仲間だもの」
「仲間…」
「一緒にサッカーをやったら、お前ももう仲間さ!それに」
円堂がニカッと笑って両手を広げた。
「こんなに晴れた日にサッカーやらないなんて損だぞ!」
「お前は雨だろうと風だろうと関係ないだろ」
「まぁ、そうなんだけど」
メンバーが笑うのを見て、カイはハッと何かを思い出す。
円堂が教えてくれた。
空を見上げると青空が広がっていて…、
− サッカーを続けるという事は強いチームであることじゃない
「!?」
− 勝ち続けることじゃない
「……リク?」
− 兄さんが楽しくサッカーをやってくれたら、俺も一緒だよ…
『兄さんがサッカーをやったら俺もサッカーをしてることに…って、やっぱりややこしいよ』
『そうだねぇ』
『でも、なんか良いなそういうの』
『うん』
『あ、鳥』
『ん?』
『…飛んでった。それにしても』
『うん』
『良い天気だ』
『綺麗な空だね』
そうだ、
あの時の…あの空は、
とても綺麗な青空で…
『約束しよう』
『俺達はずっと一緒にサッカーをしよう』
『どちらかがサッカーを続けてさえいれば』
『俺達はずっと一緒だ』
リク…
カイは空に手を伸ばした。
しかし、何も掴めずに下ろしかけたその腕を捕まれハッとする。
見れば円堂が持っていたボールをカイに渡す。そして「よし!」と後ろにいたメンバーを振り返る。
「サッカーやろうぜ!」
ねぇ、リク…
また一緒に、サッカーやろうか
一羽の鳥が青空を横切っていった…。