風丸はただ呆然と立ち尽くしていた。




結局、俺は円堂の為と自分に言い聞かせて…何もしてやれていなかった。
やっぱり、俺は…




「風丸」

「!」

振り返れば円堂が笑っていた。


いつもの、あの太陽の様な笑顔だ。

そしてゆっくりと手を伸ばし、風丸の頭を軽く撫でる。



「ありがとう…ごめんな」

「……っ」

風丸は泣きながら首を横に振る。



「俺じゃない…その言葉は、俺に言う事じゃない。立向居に」

「でも、こんな事言うのも変だけど…風丸が俺と一緒に居てくれて嬉しかった」





「………ありがとう」







 − 俺の言った通りだろう?


また居なくなっちゃうの?


 
 − 居なくならないさ。俺はずっと兄貴と一緒だ…それに兄貴は一人じゃない


うん…

 − 兄貴

うん

 − ……おやすみ








「……」

辺見は気まずい視線に困っていた。

佐久間と成神を前に、何と言えば良いのか…すると佐久間が無言で近づいてくる。


「佐久間…悪かっ」

 ドカッ


「いってぇ!!」

「うっさいアホ!!謝る相手が違う!!」

「…っ」

成神は辺見に無言で抱きつき、何も言わない。

「成神…」

身体を震わせ、泣いているのが解かる。

「ごめん」

何も言わずに首を横に振られ、もう一度「ごめん」と言って震える肩を軽く叩く。



「ありがとう」

今度は小さく頷くのが解かった。





佐久間はそんな成神に小さく笑みを浮かべたかと思えば、すぐに険しい表情になって鬼道を睨んだ。

「…」

鬼道は何も言わない。歩を進めてくる佐久間に殴られるのを覚悟してただ待つ。

佐久間は一度大きく腕を振りかぶり、しかし力なくトン、と鬼道の胸を叩いた。


「…馬鹿」

「あぁ」

「大馬鹿」

「すまん」


「…また、一緒にサッカーやろう」

「あぁ」









「ごめん…ごめんね」

「もう良いよ」

「俺、皆の事大好きだよ」

「知ってる。皆も緑川の事大好きだよ」

「まだ家族でいてくれる?」

「当たり前だろ?一緒に帰ろう」

「…うん」

泣きじゃくる緑川を優しく抱きしめて落ち着かせる様に何度もその背中を撫で「大丈夫だよ」と言い聞かせる。


大丈夫。俺達は家族なんだから、
何度でもやり直せるさ







「立向居…」

「円堂さん…良かっ」

「ごめん!!」

「えっ?」

自分の前で90度に近く身体を折って謝る円堂に立向居は慌てる。


「や、やめてください!円堂さんは何も悪くないです!」

バッと顔を上げた円堂は思いきりの笑顔だった。
立向居は安心する、


あぁ、俺の知ってる円堂さんだ




「ありがとう!」

「…はい」







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