風丸はガクリと膝を付く。
「ま…だ、まだだ」
拳を地面に叩き付けた。何度も、何度も…
肌が擦り切れ、地面に血が滲む程に強く、何度も
「まだだ!俺達は負けてない!まだやれる!」
「風丸さん…」
フラリと立ち上がって己を睨んでくる風丸に立向居は静かに話しかけた。
「こんなのは円堂さんのサッカーじゃありません。本当は風丸さんも気付いているんでしょう?」
「黙れ!どんなサッカーだろうと、そこに円堂が居るなら俺はそれで良い!!」
「じゃあ、どうしてそんなに辛そうなんですか!?」
「!?」
立向居の言葉に風丸は目を見開く。
辛い…?
これは、辛いという感情なのか?
円堂のサッカーは、
俺が心を動かされた…アイツのサッカーは…
「弱さは必要ない!!」
「…ぁっ」
突然カイが叫んで頭に激痛が走る。思わず頭を抱えて唸る風丸に立向居が駆け寄ろうとするがその前にカイが立ち塞がった。
「どいてください!風丸さんが…」
「彼は強さを求めてる。大好きな円堂君の為に…どうしてそれを君が邪魔するの?」
「間違っているからです」
「何が間違っているの?強くなれば円堂君の側にいられるから…」
「円堂さんは仲間をそんな基準で選んだりする人じゃない!」
「試合を…続けよう」
「…っ、風丸さん」
風丸は立向居の呼びかけに応える事もなく自陣へと戻っていった。
「俺は強い…大丈夫、俺は…」
自らに言い聞かせる様に風丸はブツブツと呟いている。吹雪はそんな風丸をチラリと見たが、何故かいつもの様に揶揄う気にはなれなかった。
強さってなんだろう。
ねぇ、アツヤ…僕達はどう?
今の僕達は強いのかなぁ?
− それは兄貴次第だよ…
声が、
聞こえた気がした。
今までアツヤは吹雪の呼び掛けに応えてくれなくなっていた。
居るのは解かる。それなのに反応してくれなかった。それが今、吹雪の呼び掛けに優しく応えてくれた。
僕次第…?
− そう…俺達は一人じゃない
僕達は、一人じゃない…
胸の辺りが暖かくなる…何だろう。前にもこんな感覚を味わったような、
自分には安心できる場所があるんだと、そう感じる事ができたような、
あれはいつの事だっけ、誰が教えてくれたんだっけ、
− 思い出してくれ…周りを見れば、
そこには仲間が居ることを