「よし、遊びに行こう」

休日、珍しく部活も休みだったので何となく談話室に集まっていた源田、成神、佐久間の三人。
何の前振りも無しに佐久間が突然、立ち上がって言った。

源田は読んでいた雑誌を静かに閉じ、成神は携帯から佐久間へと視線を移した。
帝国サッカー部の女王様と噂されているとかいないとか…の佐久間の我が儘は大体通る。却下出来るとすれば、鬼道だけだが…生憎と雷門へ避難、もとい転校してしまった為に佐久間の暴走を止める者は居なかった。



「辺見先輩も引き摺って…じゃない、誘ってきます」


死なば諸共。
成神は嫌がる辺見の顔を想像して笑顔で辺見の部屋へと向かった。

数分後、何故か若干息を切らせて不機嫌な辺見と、ニコニコと上機嫌な成神がやってきた。


「遊びに行くって…何処に行くんだ?」

源田の問いに佐久間は腕を組んで言い切った。


「考えてない」

「考えてないのかよ!」

「あ、じゃあゲーセン行きましょうよゲーセン」

成神の提案に誰も反対しなかったので、一同はゲーセンへと行く事にした。

「休日にゲーセンとか普通の男子中学生っぽい!」

街中を歩きながら成神が笑顔で言うと辺見が溜め息をつく。


「忘れてるかも知れないが、俺達は中学生だからな?」

「何故か忘れがちだよな…不思議だ」

源田が感慨深げに唸り、佐久間は「どうでも良い」とキョロキョロ辺りを見回す。

「ゲーセン久しぶりだなぁ」

目当てのゲーセンにたどり着き、さて何をしようかとなった時に成神が「はい!はい!」と手を上げる。

「音ゲしたいです!」

「生き生きしてるな、お前」


成神に連れられ、リズムゲームの筐体の前に立った辺見は首を傾げた。

「どうやって遊ぶんだ?」

色のついたボタンを適当に押しながら画面を見る。


「え、やった事ないんですか?」

成神は信じられない物を見る目で辺見を見た。


「や、遊び方知らんし」

「これはですね…」

成神がお金を入れて説明しながら操作するのを辺見は「?…??」という表情で傍観していた。

「はい、始まりますよ」

「え、えっ?…何か落ちてきた!」

「だからその色のボタンを…」


テンパる辺見に佐久間はケタケタ笑い、辺見同様にリズムゲームをやった事のない源田は興味深そうに画面を見ていた。

「ゲームオーバーだな、成神、俺と勝負しようぜ」

「佐久間先輩、一度も俺に勝った事ないのに自信ありげですね」

「ふっふっふ…俺のムラサキ姐さんを今までのムラサキ姐さんと思うなよ」

佐久間は何やらボタンでキャラを選び出す。

「なんと…眼鏡をかけている!」

「キャラデザの問題!?」

「あぁ、ムラサキ姐さん今日もセクシー」

「俺の六に敵うとでも?」

「メガネ歌謡にしようぜ」

「嫌ですよ、何でそっちの持ち曲なんですか…シュレーディンガーの猫にしましょう」

「鬼か」



「あいつらの会話が全く理解出来ん」

「同じく」

取り残された源田と辺見は佐久間達二人に背を向けてその場を離れ、UFOキャッチャーのコーナーへとやってきた。

「柔らかそうな縫いぐるみがたくさん…触りたい」

ガラスにへばりつく辺見に源田は苦笑しながら「どれが欲しいんだ?」と聞く。


「このでかいアルパカ」

辺見が指差した先にあるのを確認した源田が頷いて挑戦する。

「取れるのか?」

「さぁ…?」

源田は首を傾げながらも何度か挑戦していく内にコツを掴んだらしく、アルパカをゲットして辺見に差し出す。

「おぉ、ありがとう」

余程、触り心地が良かったらしく辺見は珍しくニコニコとしていた。


「あーっ、源田先輩が辺見先輩を縫いぐるみで釣ってる!」

そこに、対戦を終えたらしい成神達が合流し、格闘ゲームなどを楽しんでゲーセンを後にした。


「あー、楽しかった」

「たまにはこういうのも良いな」

「俺も源田にペンギン取ってもらえて満足満足」

「源田先輩、UFOキャッチャー上手いですね」

「器用だよなぁ」

「コツさえ掴めば…」



暫く歩いて成神が小さく呟いた。

「ゲーセンも良いんですけど…」

「うーん…」

佐久間も抱えたペンギンの頭に口元を寄せて唸る。


「やっぱり…な」

「源田が軽く笑うと、辺見も苦笑する。

「あぁ…そうだなぁ」







「あ、あそこに居るの佐久間達じゃないか?」

「あ、雷門のキャプテン」

「うっ…」

「鬼道さんが居る♪」




「おーい、お前達もサッカーやろうぜ!」


円堂の言葉に4人は顔を見合せ、笑った…。









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