修羅場は切り抜けた。
燃え尽きたよ…僕は真っ白さ、


「はぁ…」


まとめ上げていた髪を下ろしてのそのそとベッドに潜る。

うとうとしながら、ふとハーゲンダッツのバニラが食べたいなぁ、なんて考えてしまって目をカッと開く。


「ばかばか、僕のばかっ」

体を起こして頭を振る。食べたいと思ったら物凄く食べたくなってきた。

欲しいと思ったら手に入れる!
それが僕の信条。

一度下ろした髪をまたまとめるのも面倒だったから適当に撫で付けて部屋を出る。
時計を見たら23時前。

早く帰ってきて動画でも見ながら食べて寝よう。




コンビニで目当てのバニラに加えて色々と買い込み、夜道を歩く。ガサガサとなるコンビニの袋を見下ろして早く食べたいなぁ、とニヤけた表情で角を曲がりかけた時に向こう側から来た人物とぶつかった。

「わっ…」

「っ」


僕の漫画にだってこんなベッタベタなシチュエーションなんてないぞ。
でも、ぶつかってきた子が美少女ならフラグになるんじゃ…


「あばばばばっ…」

なんか、モヒカンの目付き最悪な男なんですけど!
僕のフルボッコフラグなんですけど!


僕…無事に生きて帰れたら2chにスレ立てるんだ。

スレタイは

『コンビニの帰りにモヒカンにフルボッコにされた件』




「お前…大丈夫か?」

「…………え?」


あれ、モヒカンから僕を気遣う言葉が聞こえてきたけど気のせいかな。


「こんな時間に女が一人で危ないだろ」

「はい?」


…………女?


彼には僕以外の誰かが見えてるんだろうか?
スレタイ変更だな、


『コンビニの帰りに出会ったモヒカンが見えない何かに話しかけていた件』


「おい…」

「…………」


いや、確実に僕の目を見ている。ばっちり目が合っている。
つまり、僕は女の子と間違われてるのか…髪切ろうかな、


でも、これはチャンスなのでは?こいつはきっと女の子には手を出さないタイプの悪だな、うん。


「あ、大丈夫です」

「………」

無言かよ


「えっと…じゃあ、ぼ…私はこれで」

微笑みながら会釈をして「ぶつかって、すみませんでした」と側をすり抜けた。

よし、これで帰れるぞ。





「……………」

「……………」

「……………」

「……………」


何で…


付いてくるの?あのモヒカン…


怖くて振り向けないけど、確実に後ろから付いてくる。
どうしよう、怖い。このまま交番に行こうか…なんて思ってるとモヒカン以外の第三者に声をかけられた。

見るからにDQN。
お巡りさん、この人です。と、言いたくなるような嫌らしい笑み。


「ねぇ、彼女一人?」

そんな使い古されたテンプレ台詞で女の子が釣れると思うなよ、

というか、僕ってそんなに男らしくないのかな?落ち込むわー


「すいません、急いでr…」

やんわりとお引き取り願おうと発した僕の台詞が終わる前に視界からDQNが消えた。


「えっ」

「目障り」

気付けば、すぐ側にはモヒカン。
体勢からして蹴りを入れた直後みたいな…

視線を変えると離れた所でお眠りになっているDQN。


「お前」

「はっ、はい!」

「まだ家に着かねぇの?」

「え?」


もしかして…



「あの…もしかして、送ってくれてるつもり…だったり、します?」

僕の言葉にモヒカンは顔をしかめて視線を逸らす。

え、マジなの?



「す、すぐそこです」

「………」

だから、無言かよ







どうして僕は、家の前に着いた時にそのまま帰ろうとするモヒカンを呼び止めて家に上げてしまったんだろう

そして普通に連絡取り合ったり、モヒカンが僕の家に何度も押し掛けるのを享受してしまっているのは何故だろう

何より、


僕はいつ、自分が男だとカミングアウトできるのだろう……


僕が立てたスレがもう5つ目なんだけど…、





『コンビニの帰りに出会ったモヒカンに女と勘違いされて迫られている件 part5』






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