「明日は部活休みだっけ?」

「あぁ、何かグラウンドの点検とか清掃とか…大掛かりにするらしいぞ」

「まぁ、試合が近いとかないから良いんじゃね?」

源田、辺見、佐久間の三人は部活が終わってから、寮の廊下を自室へと向かっていた。
それぞれの部屋の前に着き、ほぼ三人同時に扉を開き、


━ ガチャ…

━ バタンッ!


「?」

「何だ?」

源田が扉を開いた瞬間に勢いよく扉を閉めた音に、部屋に入りかけていた辺見と佐久間が振り返る。

視線の先にはドアノブに手をかけたまま動かない源田がいる。

「どうかしたのか?」

辺見の問いかけに、源田は大袈裟なほどビクッと反応して振り返った。


「いや、何でもない。気にするな…」

そう言いながら後ろ手に扉を開き、ギリギリ一人が通れるくらいの隙間から中に入って扉を閉めた。


「……怪しい」

ジト目で源田が消えた扉を睨む佐久間をチラリと見た辺見は、内心で溜め息をつきながら佐久間の名前を呼んだ。

「そう言えば、鬼道が寮監に挨拶に来てるらしいぞ」

「何だって!?」

辺見からの情報に佐久間は一目散にその場を離れる。

鬼道には口止めされてたが、これで源田は佐久間に邪魔される事はないだろう。


何となく、源田の身に何が起こったのか理解していた辺見は、今度源田に何か奢らせようなどと考えながら自室へ入っていった。





その頃の源田はと言えば、

「何で…お前がここに居るんだ?」

目の前にはここにいるはずのない人物、アフロディが笑顔を浮かべて立っていた。

「酷いじゃないか、人の顔を見た瞬間に扉を閉めるなんて」

「いや、いきなりだったから驚いて…って、だから何でここに?」


アフロディは源田の問いに「だって…」と困ったような表情を浮かべつつ、近付いてきた。

「最近、源田くんが会いにきてくれないんだもの」

未だに扉の前につっ立っていた源田はアフロディに軽く押されて背中を扉に押し付ける。

「部活が忙しくて…それに、明日が休みだから明日会いに行くと連絡しただ…ん」

源田が言い終わる前にアフロディがその口を塞ぐ。

「…ん、うん。だからね、今日来たんだよ」

「…?」

キスの後に猫のように首筋に擦り寄ってきたアフロディの頭を撫で、源田は言葉の意味を考える。

アフロディはクスクスと笑いながら源田の耳元で囁いた。

「明日休みなんだから…今日はエッチな事、たくさんしようね?」

「!?」

源田は思わずガバッとアフロディを引き剥がし、朱に染まった己の頬を自覚しながらアフロディを軽く睨む。

「お前な…」

アフロディは源田の批難の眼差しを気にする風もなく、源田の手を取って部屋の奥へと導く。

恋人になってから結構な時間を共に過ごしたが、源田はいつまで経っても奥手で初な反応をする。
普段は見惚れる程に格好良い源田の、このようなギャップがアフロディは大好きだった。


「ところで…」

アフロディによってベッドに押し倒され、若干諦め顔の源田がふと口を開く。

「お前、どうやってここまで来たんだ?」

仮にも、かの帝国学園の寮である。
セキュリティはしっかりしているはずだし…アフロディが警備の目を潜り抜けたとしたらそれはそれで問題だ。

するとアフロディは源田の腹部に跨がったままキョトンとした表情で首を傾げる。

「普通に入れたよ?寮の前にいたら、声かけられて友達に会い来たって言ったら一緒に入れてくれた」

「…ほう」

無条件に部外者を寮内に入れるなど…そいつに下心がない訳ない。
後で、特徴を聞き出して特定しなくては、


脳内で物騒な事を考えていた源田はアフロディの不満そうな表情に気付かない。

「もぅ…」

自分以外の事を考えてるらしい源田にアフロディはむっとしながら後ろ手に源田の中心へと手を伸ばした。

「っ!?」

突然、急所を鷲掴みにされて源田が息を飲む。それほどアフロディは容赦なく掴んだのだ。

「源田くん…目の前に僕がいるのに別に考える事があるの?」

そして、ゆったりとした動きでソレを揉みしだいた。

「…っ」

布越しの感覚にもどかしく感じながらも、目の前で綺麗に微笑むアフロディが自分のものに刺激を与えているのだと思うと、直接的な刺激がなくとも充分に興奮できた。

「ふふ…その気になってくれたみたいだね」

自分の手の中で明らかに形状を変えた源田のものを感じてアフロディは妖しく笑う。


「汚しちゃうから脱ごうよ…」







「あっ…源田、くん…んっ……」

服を脱いだ二人は体勢を入れかえ、源田がアフロディに覆い被さるようにして愛撫を施していた。

耳元や首筋、鎖骨にキスをしながら、指先で胸の突起にも刺激を与える。

「…あっ、ぁ…も、源田くんっ…もぅ、良いから…」

我慢出来ずに、足をもどかしげに源田に擦り寄せるアフロディに源田は喉の奥で笑う。


「…お前は待てが苦手だな」

「…意地悪っ、源田くんだって早く僕が欲しいくせに」

頬を上気させて源田を睨む涙目のアフロディを宥めるようにキスをして源田は手をアフロディの下肢へと伸ばす。

普段は初な反応をするくせに、いざ身体を重ねると人が代わったように(むしろ、普段の源田のように)攻め立ててくるのだからタチが悪い。


「…あっつ、」

指が1本、体内に入ってくるだけで痛みに顔をしかめた。

「大丈夫か?久しぶりだしな…ゆっくりするから」

額に軽くキスをされてアフロディが微笑む。源田はそれに微笑みを返して、宣言通りにゆっくりと解し始めた。

「…ぅ、あっ…ぁ、んぅっ…」

動かす度に軽く呻いていたアフロディだが、時間をかけて唾液で濡らしつつ指が3本ほどスムーズに出入り出来るようになった頃には艶かしい喘ぎに変わっていた。


「あっ、あぁ…源田く…はっ、んぁ…いい…」


「………」

この部屋にもローションを準備した方が良いのだろうか、

まさか寮にまでアフロディが来るとは思っていなかった源田は、喘ぎ乱れるアフロディを見ながらふと考えた。

アフロディはそんな源田を見て、軽く蹴りつける。

「またっ…ん、別の事…ぁ、考えて、る…」

「いや、お前の事だよ」

間接的には、などと考えて指を引き抜く。

「んぁっ…」

突然、異物感がなくなり、アフロディは軽く息をつく。

「そろそろ良いよな?」

アフロディが答える前に口を塞ぎ、深いキスをしなからアフロディのソコに既に勃起していた己の怒張を擦り付ける。


「ぅうっ…ん、んっ…」

舌を絡めながらアフロディが急かすように腰を揺らめかせる。

それに誘われるように源田は腰を進め、二人はゆっくりと繋がっていった。

「…はっ、あ…アフロディ…」

「ん、源田くん…あっ、いい、すごい…んっ」

アフロディの膝裏を押し上げるようにして、段々と動きを激しくする。アフロディには少し辛い体勢かもしれないが、少しだけ我慢してもらおう。

何度もキスをしながら、お互いの名前を呼びながら快感を貪る。




「あっ…あ、はっ…んっ…」

「…っ、アフロディ…」

「…源田くんっ…あ、も…イくっ、あ…イっちゃう…っ」

「っ…」







「さて」

翌日。
源田はどうやってアフロディを寮から帰すかを考えていた。寮監に見付かったら何て言い訳をしよ…

「源田くん、朝御飯食べに行こうよ」

「待て待て待て」

普通に部屋を出て行こうとするアフロディの腕を掴んで止める。

「寮監に見付かったら…」

「その、寮監さんが許してくれたんだよ」

「は?」

アフロディは笑いながら扉を開ける。

「言ったでしょ?昨日一緒に入れてくれた人がいるって…ここの寮監さんなんだって…あ」


廊下に出たアフロディは目の前で丁度向かいの部屋から出てきた佐久間に出くわす。
慌てて源田も出るが後の祭。佐久間はゴミを見るような目を源田に向ける。


「…お前は何か勘違いをしている(…半分くらいは間違っていないが)」

「……アフロディ、一緒に飯食いに行こうぜ」

源田から遠ざけるようにアフロディの腕を引いて歩き出す佐久間。




「あ、結局見付かってるし」

遅れて出てきた辺見は遠ざかる二人と、呆然と立ち尽くす源田を見て肩をすくめる。

そして、源田を追い越し様に肩を叩き言った。


「朝飯、お前の奢りな。お前のせいで鬼道に小言を言われたんだからな」


「……………」

最早、何の話かと聞く気力の無い源田は辺見の後を力なく追い掛けた。







「お前、アフロディに近付くなよ」

「佐久間くん、これ美味しい」

「んじゃ、源田の分も貰っとけ。ほら」

「え、良いの?」

「良いんだよ」

「…………」

「あ、源田。デザートもな」

「…………」

「アフロディ、飯食ったらサッカーやろうぜ」

「うん」

「…どうしてこうなった」



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