「我らはエイリア学園、マスターランクのダイヤモンドダスト!」

「ほぅ…」

キラリ、と円堂の目が光ったのを鬼道は見逃さなかった。

面倒な事になりそうだ…。


「お前たちに凍てつく闇の冷たさを教えてやろ…ぅっ?」

ガゼルはいきなり円堂に手を引かれて、キョトンとする。そんなガゼルに円堂はにっこりと笑って言った。


「そんな事より、ヤろうぜ?」

「サッカーを…だよな?」

本能的に恐怖を感じたガゼルが確認するが、円堂はニコニコと笑ったままだ。


恐い…っ、






そんな感じの出会いで雷門に、というか円堂に良い思い出のないガゼル…もとい、風介。
韓国代表として再び円堂の前に現れた時に、ニヤリと暗い笑みを向けられた。

無意識に、後退ってしまったのは内緒だ。





アジア予選も終わり、韓国の代表としてする事もなく暇をしていた時の事。
携帯に知らない番号からの着信。


「はい…」

『よぉ、ガゼル…今は風介か』

「…っ」

この、声…は

「何で…番号」

『緑川に問い詰め…聞いた』




…覚えていろ、緑川


ギリッ、と歯軋りする風介を気にする様子もなく、円堂は話を続ける。

『なぁ、サッカーやろうぜ』

「はぁ…?」

円堂の理解出来ない言葉に風介は眉根を寄せる。

「どういう意味だ」

『え、そのままの意味だけど…別の意味で捉えたいなら、それはそれで構わない』

「…っ、死ね!」


実は韓国戦の直後に散々、思い返すのも恥ずかしいアプローチをされていた。風丸と鬼道が円堂を無理やり回収しなければ風介はあの場で憤死していただろう。



「大体、お前はどうして私に構うんだ」

『見た目が好み』

「見た目って…」


何だか腑に落ちない。
風介は重い溜め息をついて、イライラを隠す素振りもなく言った。

「お前は私に構っている暇などないだろう。今から世界を相手に戦う舞台が待っているというのに」

『あー、分かった』

姿は見えずとも、円堂が笑っているのが容易に想像できて思わず顔をしかめる。


『んじゃ、世界一になったらお前を迎えに行くから、そしたらサッカーやろうぜ』

「……世界一になったらな」








「よっ」

目の前で片手を軽く上げる円堂に、風介は難しい表情だ。

「まさか、本当に世界一になるとはな」

風介がシュッ、と投げたボールを受け止めた円堂は首を傾げる。


「やるんだろう?サッカー」

「…あぁっ」

ニカッと笑う円堂に鼻で笑って返す。



「凍てつく闇の冷たさを教えてやろう」

「じゃあ、俺は恋の仕方でも教えてやろうかな」

「馬鹿だろ、お前」

「え、だって…お前、俺に惚れてるだろ?」

「…っ、自意識過剰も甚だしい!」


少し顔の赤くなった風介に円堂はケラケラ笑いながらボールを軽く蹴って歩き出した。

からかわれているのか、本気で言っているのか判らない。
円堂の言う事は話半分は聞き流せと緑川から言われているが、細かい所まで気にしてしまうのが風介の性格だ。

円堂と会話をしていると血管の2、3本は千切れてしまうのではないか…、


ゆっくりと深呼吸をしてから円堂の後を追う。




追いかける背中と、並んで歩く様になるのはもう少し先のお話。





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