第一印象は最悪だった。


つか、怖い。だってあの帝国のゴールキーパーだぞ?
目付きも悪いし、無口だし、自信満々な感じがもう俺とは正反対。関わり合いになることなんてないだろうから、どうでも良いんだけど。

なんて、
そんな風に思っていると大抵は関わっちゃう不思議。

今だって、



「お前は…確か雷門の」


ほらな?




部活が終わって帰宅途中。ちょっと駅前に寄り道して帰ろうなんて思った10分前の俺を殴りたい。


「えーと、は…は…?」

何だよ、笑ってんのか


とか言えるはずもなく、

「…半田」

相手、源田が思い出せなかったらしい俺の名前を教えてやる。

「あぁ、そうだった…すまない」

真っ直ぐ家に帰っていれば、会わなくてもすんだのに…

「そうだ、鬼道は元気か?」

「元気だよ。時々、円堂の扱いに困ってるみたいだけど」

「そうか」


あ、何か今の笑顔(という程大した変化ではなかったが)はちょっと優しそうだった。

ふと、鬼道の言葉を思い出す。

『源田はああ見えて優しいし、面倒見も良い…不器用で無口だから誤解されやすいんだ』

俺もコイツの事を誤解してるんだろうか、
なんて思いながら、どうやらガン見してたらしい。

源田が困った様な表情で「何か…俺の顔についてるか?」と聞いてきた。
まぁ、付いてるっちゃあ、付いてるな…ペイントが。

「あ…いや、何でもない」

意識的に源田の顔から視線を逸らす。

あ、何か…俺らしくない事を思い付いた。

「なぁ、お前ヒマか?」

「は?」

予想外の言葉だったらしく、源田は目を丸くして俺を見つめる。
怖いけど、こんな整っている顔に見つめられると緊張する。風丸とかさ。

あ、余計な事を考えてる場合じゃなかった。

「えっと…あ、そう。今からちょっと軽く何か食べに行こうとしててさ」

「あぁ…」

源田は自分が食事に誘われたという事を理解したように軽く頷いた。

「あ、用事があるとか、嫌なら良いんだけどさ」

「いや…お前が良いなら」

つか、俺が誘ったのに良いも悪いも…

結局、近くのファミレスに行くことになって歩き出した途端に源田を呼ぶ声。
振り返ると見事に帝国メンバーが並んでいた。苦手なんだよな、帝国…

「何してんだ?その制服…そいつ、雷門の奴じゃね?」

雷門の生徒だったら何なんだよ。
見た目ヤンキーのデコのくせに!

「あぁ、半田だ。雷門のサッカー部の」

「え、いましたっけ?」

ヘッドフォンのツンツン頭め…覚えてろよコノヤロー

「お前はどうでも良いけど、鬼道さん元気?」

眼帯野郎…見た目に特徴あるからって、調子に乗んな

むーっとした表情をしていたんだろう。源田が苦笑しながら、俺の代わりに帝国の奴らの相手をしている。

「飯食いに行くなら俺達も行く」

は?

紹介も済ませた頃、眼帯…佐久間が言うと、辺見は嫌そうな顔をしたが成神は乗り気だ。
ニヤリと笑いながら俺を見る。

「面白くなりそうですしね」

何か嫌な感じ…

「辺見先輩!日替わりは諦めてください」

「…今日、サバの味噌煮だったのに」




かくして、何故か帝国メンバー+俺でファミレスにいる訳たが…なんというアウェイ感


たまに、源田や成神に何か聞かれては返事を返しながらもそもそとグラタンを食べる。

コイツらを見てて感じたのは、意外にも辺見が常識人で佐久間と成神に玩具にされているという事と、源田が世話焼き好きで、ちょっと天然入っているという事だ。

何か家族みたいで良いなと思ったのは内緒。



なんやかんやで時間はすぎ、その日は普通に解散したんだけど…



数日後


「あ、いたいた!半田!」

また駅前に寄り道してたら声をかけられた。声の主を確認してから溜め息をつく。


「お前な…仮にも俺は年上だぞ」

「まぁまぁ、気にしない気にしない」

成神は今日は一人らしく、何やらポケットを探って携帯を取り出した。
というか、何だ…俺を探してたみたいな、


「メアド教えて」

「は?」

携帯を掲げて笑顔の成神に首を傾げる。

「何で?」

「良いじゃん、俺達もう友達だろ?んで、源田先輩とも友達になって」

俺達、いつ友達になったんだ……源田?

「源田がどうかしたのか?」

「源田先輩って奥手だから」

「質問の答えになってないんだが」

まぁ、断る理由もないしメアドを教えてやったら成神はニヤニヤ笑って「任務は完了した」と、手を振ってその場を去った。

その後、俺の携帯に佐久間と辺見からメールが届き、また数日後にはデコメいっぱいの源田からのメールが届いて、引いた直後に「今のは佐久間と成神の悪戯だから気にするな」と源田から謝罪メールがきた。

何なんだコイツら…


それからもメールのやり取りが続き、たまに届く源田っぽくないメールは佐久間達の悪戯だな、と見分けがつくようになった。

そして、辺見と源田から謝罪メールが届くというのが常になっていた。



関わる事はないだろうなんて思ってた奴と関わっちゃうなんて事は普通にあるし、このまま親友にだってなれるかも知れない。

俺は流れに身を任すタイプなんで、これからどうなるかなんて分からないけど…まぁ、そんな感じで生きていきます








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -