他人と馴れ合うのは苦手だ…。



「あ、居た居た。不動!!」

休憩中に一人、メンバーから離れて宿舎近くの森にいた不動は声をかけられて視線だけよこす。
予想していた通りに視線の先には円堂がいて、予想と違うのは円堂が紙袋を持っていた事か…、


木の下に腰を下ろしていた不動の隣に座り、円堂は首を傾げる。


「何で向こうで皆と一緒にお昼食べないんだ?」

「…ウザいから」

「別に不動に何もしてないじゃん」

「目障り」

「お前、酷い奴だなぁ」

思わず苦笑する円堂に不動は「お前もだよ」と不機嫌そうに言う。


「何で俺に構うんだよ」

「構いたいから」

「変な奴」

「よく言われる」

笑って言う円堂を見ていると、何か困らせてやりたいような…そんな気分になる。
円堂は人とズレているのか、普通の人なら怒る事でも笑って流すという事をする。



「…お前な、あんまり俺に構うと襲うぞ」

「ここで?」

「ここで」

「良いよ」

「えっ」


ジッと自分を見つめてくる円堂に言った手前、何かしなければいけないのか…今更冗談だと言いづらい雰囲気でもある。


「……」


無言で肩に手をかけても円堂は何も言わない。
若干ヤケになって押し倒す。

円堂が持ってきていた紙袋が倒れたが中身がぶちまけられた訳じゃないからどうでもいい、

そんな事を何となく考えながら円堂を見下ろしていると、円堂は真っ直ぐな瞳で不動を見つめている。


「………」

「………」






「…やめた」

不動は身体を起こし、紙袋を立てる。続いて円堂も再び不動の隣に座ってニッと笑う。


「不動って何だかんだで常識人だもんなー」

「うっせぇ、午後も練習あるし…キャプテンが足腰立たないなんて可哀相に思えただけだ」

「それは不動が優しくしてくれたら問題ない」

「へぇ、優しくしてほしい訳?」


からかうようにニヤニヤと笑いながら言えば、円堂は真面目な顔でコクッと頷いた。



「うん。優しくしてほしい」

「…っ!?」

まさか素直に返されるとは思っていなかった。本当に扱いづらいタイプの人間だコイツ、


「普段から不動が優しくしてくれたら、皆も不動が本当は良い奴だって分かるよ」

「…あ?」

微妙に話が食い違っている気がする。


「いつも酷い事しか言わないし、たまには皆に優しい言葉の一つでもかけてやったら良いと思う」


「あ…あー、そっちの話か」

「どっちの話してたんだ?」

「何でもない。気にするな…つか、忘れろ」



いたたまれなくなった不動は頭を抱えて視界から円堂を消す。

円堂は首を傾げたがハッと思い出したように持ってきた紙袋を手に取る。


「不動、おにぎり食うか?お茶も持ってきた」


もう、
コイツ何がしたいのか分からない。




「…食う」



とりあえず今は飯食って忘れよう。
時間はたっぷりあるし、この変な生き物との付き合い方については後からゆっくり考える事にする。


一生懸命におにぎりの具材の説明をする円堂を見ながら、そんな事を思った…。



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