恋人というのは甘いもの


というのは世間の勝手なイメージな訳で…、




成神は目の前にいる二人が俗に言う「カップル」である事を信じられずにいた。



「ウザい、マジでウザい」

「はいはい、それなら近付かないでくれる?」


寮にある談話室にて、佐久間と辺見の不毛な言い争いは続いていた。
成神からしたらどっちも悪いし、どっちも悪くない。


要するにどうでもいい。



「ホント、お前のそう言う所が大嫌いだ!!」


佐久間はそう言い残すと自室へと向かっていく。


「…良いんですか?」

「何が?」

佐久間を見送る事もせずに携帯を弄り始めた辺見は、面倒臭そうに返事を返す。


「佐久間先輩、行っちゃいましたよ?」

「言われなくても分かるよ」

「追いかけないんですか?」

「何で?」

「何でって…」


成神は不満気な表情で眉根を寄せる。

この二人は本当に恋人同士なのか?

喧嘩をしている所しか見た事がない気がする。



「放っておけよ、頭に血が上ってる奴に何を言っても無駄」

「冷めてますねぇ…」

「冷静なんだよ」



それから暫く辺見は携帯を弄ったり、談話室にやってきた源田や咲山と話したりして部屋に戻る事にした。







自室の隣は佐久間の部屋だ。
分かってる。



きっと鍵はかかってない。




案の定、佐久間の部屋にすんなり入る事の出来た辺見は呆れた表情でベッドに座る佐久間を見下ろす。

佐久間は巨大なペンギンを抱きしめたままニヤリと笑った。


「俺の勝ち」

「ホント面倒臭ぇな、お前」

「お互い様」


ボフッと佐久間の隣に腰を下ろした辺見はガシガシと頭を掻く。


「今日は戻ってこなかったな」

「お前は追いかけてくんの遅すぎ」

「追いかけきた訳じゃない、自分の部屋に戻ろうとしたついでだ」

「可愛くねぇなぁ」

「うるさい」


ケラケラと笑う佐久間を殴る代わりに、ペンギンを殴る。


「あ、てめ…ペンギンさんになんてこと」

「私とペンギンどっちが大事なのっ」

「キモい」

「…ボケ殺すなよ」


「なぁ」

佐久間はペンギンを足元へと置いて、窺うように辺見を見る。

「ん?」

「ちゅーしようぜ、ちゅー」

「はぁ?俺達、さっきまで喧嘩してたんじゃ…っ」

辺見が言い終わる前に佐久間は辺見を押し倒し、キスをする。


「だから、仲直り?」

「何で疑問形だよ」

辺見は重い溜め息と共に佐久間の頬を撫でる。



「俺達…本当に面倒臭い」

「はは、良いんじゃねぇの?遠回りした方が長く一緒にいられるだろ」

「ん…」

佐久間は「もっかい…」と再びキスを落とし、それを何度か繰り返す。


「んっ…ぁ」

「へん…み、お前…んっ……キスされてる時は可愛いのにな」

「…黙れ」









「あー、もう…」

成神はイライラとした様子で頬杖をついた。




「今のはお前が悪い!!」

「どう考えてもお前だ!!」





「この二人、本当に面倒臭い!!」




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -