砂木沼は下鶴と杉森に連れられて御影中の情報処理室にいた。
パソコンを操作する下鶴の側で軽く辺りを見渡す。
最新の機器が取り揃えられており、エイリアでもかなり高度な技術が使われていたのが、御影もそれと同様かそれ以上に見える。
「あったぞ」
「!」
ふと、思考が別の所にいっていた砂木沼は軽く首を振って自分自身を叱咤する。
そして、下鶴は砂木沼が画面を見やすいように少し体を傾けながら操作を続けた。
「これが操唆中の全体的なデータだ。知りたいのは紺野リクという選手の事だったな…」
画面上のカーソルが選手達の名前の上をなぞる。
一人一人のデータを集めているのか…、
砂木沼が御影の情報収集能力に感心している内に下鶴は紺野リクの名前を見付け、そのフォルダを開いた…。
『!!?』
全員が息を飲み、画面を見つめた。
「データが…消去されている」
「馬鹿な…一度入手した情報を破棄するなど、今まで一度もなかった」
「……」
「…この選手の情報を見られたくない誰かがいるらしいな」
下鶴はキーボードを打ちながら「安心しろ」と言った。
「消去されたデータは復旧できる」
「そうか…」
暫くして、データを復旧させた下鶴はそのパソコンを砂木沼に譲り、自分は別のパソコンを起動させる。
「…何をするんだ?」
砂木沼の問いに下鶴は「ふん…」と鼻で笑う。
「御影のデータベースに侵入するとは良い度胸だ。解析して、どこの鼠が入り込んだのか調べてやる」
「よし、サッカーやろうぜ」
ニッと笑う円堂に知らない内に身構える。
そんな立向居達に円堂はケラケラと笑う。
「そんなに怖がるなって、何もとって食おうって訳じゃないんだから」
ふざけた感じの円堂に土門が溜め息をついた。
ふと視線を感じて顔を上げれば、一之瀬が険しい表情で自分を見ているのが分かる。
何故か、嫌な気分になってすぐに目を逸らしたが一之瀬の真っ直ぐな目が脳裏に焼き付いてしまった。小さく舌打ちをしたが何も変わらない事は分かっていた。
どうしてこんなにイラつくのか…早く終わらせてしまいたい。
雷門のユニフォームを着用している立向居達に対して、今回の円堂達も揃いのユニフォームを着用している。
黒地に半袖には赤いライン。右下から左胸へかけて走る赤い稲妻の形。
シンプルだが、暗い冷たさを与えるには充分だった。
「俺達もユニフォーム作ったんだぜー、メンバーが揃ったからさ」
「そう…彼らの名はアンブラー」
「!!?」
円堂の言葉を引き継ぐように、凛とした声が響く。
「……砂木沼」
下鶴が画面に目を向けたまま、固い表情で声を発する。
下鶴の様子の変化を砂木沼は不思議に思いながらも、下鶴の所へ移動する。
「どうやら、鼠は…俺達が最も敵に回したくない相手だったみたいだ」
「……?」
砂木沼は首を傾げて見た方が早い、と下鶴の示した画面を覗き込んだ…。
円堂の背後からスッと現れた人物は流れる髪をサラリと後ろに流して微笑んだ。
「私のチームよ」
「姉……さん?」
ヒロトが大きく見開いた瞳に映ったのは、自らの姉である瞳子だった。