緑川はかなりの恥ずかしがり屋だ。
こんなんで、よくもまぁレーゼのキャラを貫き通せたなと思う。

「好きだよ」

一言、そう言うだけで

「ばっ、ばか!何言ってるんだよ!!」

と、顔を真っ赤にする様は一体どこの少女漫画かとツッコミたくなる。「好き」だなんて、今まで何百回も(考えるだけなら何万回も)伝えているのに未だに慣れないらしい。
それを承知の上で人の居る前で愛を囁く度に、緑川からは文句を言われて周りからは冷ややかな視線をもらう。ソレが楽しくてたまらない。

そんなことばかりやってるから晴矢からは「お前はマゾか」と言われ、風介からは「その内に緑川に愛想を尽かされるぞ」と言われ、砂木沼からは「余り緑川をいじめるな」と言われてしまった。

全く皆は分かっていない。

緑川は俺の事が好きだから、ちょっとやそっとじゃ嫌われることなんてない。

ない……はずなんだけど、

はて、これはどうしたことだろう。


「………」

「………」

俺の目の前にはムスッとした表情で俺から顔を背ける緑川。
何か緑川が怒っているらしいということは分かるのだが、一体何に怒っているのかが分からない。

「緑川…どうかしたの?」

「別に…何でもないよ」

「嘘」

「……」

黙ってしまった。
うーん、困ったな。どうしよう。…というか、緑川が怒っている原因は俺なのか?違う相手に対して怒っているなら、対処の仕方も変わってくるんだけど。

「緑川?黙ってちゃ分からないよ」

意識して出来る限りの優しい声を出すと緑川はちらりと視線を俺に向けた。

「……バーンが」

「晴矢?」

晴矢が緑川に何かしたのか?殺してやろう…

「ヒロトは俺の事が好きだって」



「……………は?」

ちょっと待って。日本語難しい。『ヒロトは俺の事が好き』という言葉を晴矢がそのまま言ったのなら著しい誤解がある。

でも晴矢が『ヒロトは緑川の事が好き』ということを今の緑川が置き換えて言ったのなら、それは当たっている。
けど、それでは緑川が怒る理由が分からない。

「えーと、緑川?」

「俺の方がヒロトの事好きだ!!」

「……はい?」

「でも晴矢が『ヒロトは緑川がヒロトの事を好きなのよりもっと緑川が好きだ』って言ったんだよ!!ムカつく!!」


どうやら、後者の解釈の方で当たっていたらしいが。

えーと……これはつまりアレか。


『あなたの事がこれくらいすき』『俺はもっと好き』『それよりもっと好き』『いや、それよりry』


ってやつか。

それを当人の俺じゃなくて晴矢と…そんな可愛い緑川を見る事が出来なかったなんて!!
それを見たのが晴矢。やっぱりアイツ一回くらい…



「聞いてる!?」

「えっ…あ、はい」

それから何かが吹っ切れたのか、緑川は俺の事がどれだけ好きかという事を語り出した。



「それからね…」

「うん…うん…」





あぁっ、もう…
これだから緑川の恋人はやめられない。


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