きらきら宝物 | ナノ




ふわふわと揺れるそれは雲のような遠いものでも、綿菓子のような甘いものでも、お風呂やごはんの湯気のような安心できるものでもない。ただ、ただ、背景に調和される程度に黒ずんだ苦い煙だった。


「煙草は癌を発症しやすくさせるんですよ」
「へえ」


それで、とでも言うかのような無関心な返事に少なからず苛立ちをいだいた。煙草なんて自殺行為にしかみえない。一瞬の快楽のために金を積み、身体を狂わせていく。ボクにとって煙草は麻薬と同等だった。なまえはボクの言うことも無視し、煙草を吸い続ける。


「キミが吸っている煙よりも、周りが吸ってしまう煙のほうが有害なんだって」
「なら、ネジキくんが近づかなきゃいいでしょ」
「ボクはキミの体を気遣ってるつもりなんですけどね」


きつい口調でいったつもりだったが、彼女は何も聞かなかったみたいに携帯用灰皿に煙草を押し込み、もう一本新しいのを手にとった。もう片方の手にはライターも持っている。そのライターをボクは取り上げた。するとなまえは恨めしそうにボクをみて、何すんの、と怒るのだ。私がどうしようが、それでどうなろうがネジキくんには関係ないでしょ。そう言われた瞬間、ボクはなまえの両手首を掴み、彼女が驚くよりも速く唇めがけて噛み付くみたいに自分のそれを押しつけた。みたいに、じゃなくて実際噛み付いたに近かったのだろう。口の中でどちらのかわからないけど、鉄の味が広がった。まずい。顔をしかめる。なまえは突然のことに硬直して動かない。…こーゆう時くらい目、閉じてほしいなー。


「なっ、え、…!」
「…なまえ」
「な、に…」
「ボク、子供3人はほしいんですよね。それにキスは苦いより甘い方がいいでしょ」


自分の唇についた血を舐め取りながら言えば、向こうは一気に顔を赤くした。なんだ、こんなかわいい反応もできるんじゃないか。何がおかしいのか自分でもわからなかったけど、ボクは少し笑った。




煙を喰らう男

(茶仔さんへ!)



091222

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素敵な相互記念有難う御座いました!
わたしもネジキに噛みつかれたいで(略)



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