My little red | ナノ




意識が、浮上する。
頭や背中のあたりがごつごつとしているので、どうやら私は地面に横たわっているようだ。
そのまま瞼を上げれば暗くてよく見えない洞窟の天井が目に入る。
そう簡単には戻らせてはくれないらしい。
ため息混じりに一息吐いて、大きく吸えば冷たい空気が肺に入ってくる。
上体を起こすと掛けられていたものが落ちた。赤を基調としたシンプルな、男物の上着だった。
見覚えがあるような、ないような。
思い出そうとして首を傾げたら突然じゃり、と土を踏みしめる音が耳に入ってきた。
驚いてそちらの方を向くと、赤い帽子に黒いTシャツの男の人が少し離れた場所に立ってこちらをじっと見つめていた(・・・あ、)


男の人を見た瞬間、一気に思い出した。
そうだ、私はあの馬鹿でかいコウモリから逃げていて、この人に助けてもらったんだ。
やっと人に会えたという驚きと嬉しさのあまりに、聞きたいことが次々と頭の中を駆け巡っていくのに上手く形にできず「あ、」やら「う・・・」やらと変な声しか口から出ない。そんな私に男の人は不思議そうな顔をしてこちらにゆっくり歩いてきた。
ああちがう、まずは助けて貰ったお礼を言わないと。



「あ、あの・・・助けてくれてありがとうございました」



男の人は小さく頷いて私のすぐそばに腰を下ろすと、黒い手袋に覆われた手を伸ばし私の頭を優しく撫でてくれた。
人に頭を撫でられるなんて、何年ぶりだろう。
頭上の大きな手に何故だかすごく安心して、つい目を細めてしまう。
しばらくその状態が続いて、ハッとした私はずっと疑問に思っていた事を口にした。



「えっと・・・あなたは?」


「・・・・・・レッド」


「レッド、さん?」



男の人は頷いた。どうやらレッドさんというらしい。
私はこのまま色んな質問をしようとレッドさんの顔を見上げたら、長い前髪から除く赤い瞳と目が合った。暗くて、なんでも透き通してしまいそうな綺麗な目。
思わず見つめ返してしまい言葉を失った。
そんな私にレッドさんは撫でていた手を下ろして、口を開く。



「・・・お前は?」



その低い声に我に返り、恥ずかしくて下を向いて自分の名前だけを告げた。
目線だけ上げて様子を伺うとレッドさんは無表情のままで、気にした風でもないのでほっとした。
しかしなんであそこで黙っちゃったんだ自分・・・今更顔も上げられないのでそのまま質問にうつろうとしたら、レッドさんの右肩から黄色い生き物がひょっこり顔を出した(・・・!!ちょ、これって)
私はビックリして、つい開けた口を閉じてしまった。


ほとんどの日本国民ならば、彼の肩にいるピカ!と可愛らしく鳴き声を上げたこの生物に見覚えがあると思う。
子供によらず人気のある有名なゲームの看板と言ってもいいキャラクターで、私も体験したことはなくても名前だけは知っている。
ピカチュウだ。レッドさんの肩に、アニメでもなんでもない本物のピカチュウがいる。
架空のキャラクターのはずのピカチュウがいるということは、もしかしてここは・・・(ゲームの、中?)


レッドさんはピカチュウをそのままにまた不思議そうな顔をした。



そんなことって、ある?



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