My little red | ナノ




「(・・・・・・おかしいな)」



どうして私はこんな所にいるんだろう。
記憶にある限りは特に変わった出来事はなかったはずだ。
階段から落ちたらそこは洞窟でした?いやいやいやいや・・・全然笑えない。
今なら千尋の気持ちがよく分かる。トンネルの向こうは見知らぬ生物がいっぱいだもんね。そりゃあビックリするよね。
・・・むなしいなぁ、私。


壁にもたれて、体育座りをしている体をさらに縮める。洞窟だからなのか、孤独感からなのか、少々肌寒い。気休め程度に小さな手で膝を抱え込みながら息を吐いた。
まぁ当然、ここにいるのかもおかしいけれど、もう一つおかしな事がある。
体がものすごく、小さくなっていたのだ。それはそれは幼稚園児並みに。おまけに着ている服までもが制服から可愛らしいワンピース(+黒いタイツに編み上げブーツ)になっている。
もしかして夢オチかとも思ったけれど、ここに落ちたときに体が痛かったから、夢ではない。感覚からして死んだ訳でもないと思いたい。
じゃあ、どうして体が退行してこんな薄気味悪い洞窟なんかに。
精神まで幼くなったのか少し涙がにじんだ。

もし、もしだ。この現状を受け入れたとしても、人っ子一人見当たらないこの洞窟でこれからどうすればいいんだろうか。見回しても岩とか壁しかない。
孤独死か餓死か、と途方に暮れているとなにやらキラリと光るものが4つ視界に入った。
じっと見ているとだんだんこちらに近づいてくるようだった。
不安と期待とが入り混じった感情を抑え、息を殺して生唾を飲む。



「・・・!!(なにあれ!!)」



羽ばたくような音と大きな口と、4つの牙を光らせて正体を現したそいつの狙いはどうやら私らしかった。コウモリのように見えるけど体と口のサイズが規格外すぎる。
本能的に喰われる!!と思った私はそこから飛び退き、反対方向に向かって無我夢中で走った。
暗くて前がよく見えない上に、地面がでこぼこしていて何度も転びそうになる。
ただでさえ今は体が小さいのに後ろからは羽ばたく音が容赦なく近づいてくるのが分かった。
今度こそ涙がこぼれる。呼吸も上手くできない。足がもつれて今にも転んでしまいそうだ。
でも、転んでしまったら(それこそ終わりだ)



「だっ、だれか・・・!」



喉から搾り出した声も闇に飲まれた。ああ、もうあいつは真後ろに迫ってきている。私はこんな所で死んでしまうのだろうか。
それはあまりにも理不尽じゃないか。
こんな、こんな見知らぬ暗いところで一人死ぬなんて、一体私が何をした。


もう駄目だ。そう思った瞬間、急に現れた手に引っ張られ、抱き寄せられる。
突然視界を黒で埋め尽くされ、何事かと頭を上げたら男の人の帽子と黒髪の間から赤い瞳が見えた(息が、つまる)
男の人はその赤く鋭い視線をそのままに、口を開く。



「かみなり」



低い声でそう言うとすぐ横でバチバチッと静電気のような音がして、背後で光と共に凄まじい爆音が鳴り響いた。
もう、何が何なのかさっぱり分からない。
聞きたい事はたくさんあるのに、その疑問を頭に浮かべる間もなく私は意識を手放した。



あなたはだれ?



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