「……い、つつ……」
目が覚めると同時に、全身に痛みが走る。
その痛みによって意識が覚醒されていった。
上条が目を開くと、ぼんやりと見慣れた天井が広がった。
病室を見慣れるって言うのもいやなものだな、なんて思いながら上体をおこすと、ベッドの側の椅子に名前が座っていた。
「よぉー名前、いやぁ…また入院しちまった」
あははーっと笑ってみるが、名前は何も言わずに眉間にシワがよっていくのがわかる。
やばい。
上条はとったさに感じとり、いろいろと言ってみるがなんの返答もこない様子に焦りがよりいっそう早くなる。
「な、なんだよ名前ー、久々に上条さんに会えて嬉しくないのか?」
「…………、か」
「……へ?」
「当麻の馬鹿っっ!」
右手ストレートが上条の頬に見事にクリーンヒット。
なかなかの威力だが、いつもの用な強さではない。
「ほんと、ほんと、馬鹿なんだから………。いつもいつも、急に消えては帰ってきたら入院するような怪我ばっかりして……」
名前の目からは大粒の涙が溢れていた。
それを服の裾で乱暴に拭いながら続ける。
「毎回毎回、怪我してる姿を見せられる身にもなってみなさいよ!!どんな気持ちでいるかわかる?」
「……ごめん……」
「…………お願いだから心配させないでよ……」
上条に抱きつく名前の腕は、上条を考慮してか優しく包むようだった。
上条はその頭を優しく撫でる。
「本当にいつも心配かけて、ごめん……。ありがとう。」
顔をあげて涙を流す名前の頬に上条は手を触れて、優しい手つきで涙をすくう。
「俺がちゃんと帰ってこれるのは、俺を待ってくれる名前がいるからだ。だから、ありがとう」
愛しいきみがいるから、その為にも俺は頑張れるんだ。
俺の為に泣いてくれるような、優しい君のために。
絶対に、
「名前を守るから」
気づけば一番大切な人になっていた。
大好きな人になっていた。
「好きだよ、名前」
Title:ひよこ屋
20130827
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