苗字名前とは、いつも笑顔である。
基本的にいつも笑顔で、でもいじられたりすると拗ねたように頬を膨らましたり。
とにかく、明るい。
でも、そんな名前はある時に限ってはいつも寂しそうな表情をするのだ。
「名前ちゃん、」
日が山へと陰りだした、下校時刻が近づく時間帯。
屋上への扉をあけると、姿をみつけてそっと声をかける。
そのまま近づいて横に座った。
「よくわかったね、ここにいるって」
「あたりまえやろー、僕は名前ちゃんのことならなんでもわかるんや」
それに、というと名前ちゃんはこちらに視線を向けてきた。
「名前ちゃんが、僕の事を呼んでる気がしたんや」
当りやろ?と笑うと、名前ちゃんは表情を柔らかくして笑った。
夕日が反射してる瞳は、どこか寂しそうだった。
「なんで、わかっちゃったの?」
まるで超能力みたいと呟きながら、僕の肩に頭を乗せて寄り添ってきた。
しばらく無言の時間が続いた。
少し冷たい風が、二人の間を吹き抜けていき、髪が弄ばれているようになびく。
「帰ってこないね。上条くんと土御門くん」
「…………、そうやなぁ…」
「連絡こないね」
「ほんまやね、帰ってきたらどついてやらんと」
「寂しいね…」
そういった、名前ちゃんを抱き寄せると、しがみつくように僕のカッターシャツを握って名前ちゃんが震えだした。
「二人とも無茶ばっかりして。上条くんは入院ばっかりするし、土御門くんだって怪我してないようで、能力でなおしてるだけで絶対怪我してるし」
「うん」
「なにも言わずにどっかにいっちゃって。なにも連絡してこないで」
「うん」
「何も教えてくれない。知らない世界にいるみたいで。取り残されたみたいで」
「……」
「もしも…もし、も……青髪くんまでどっか行っちゃったら私……」
堪えきれなくなった涙を流しながら言う名前ちゃんの肩を擦り、そのあと頭を撫でながら笑っていう。
「大丈夫。僕は名前ちゃんを置いていったりせぇへんよ。ずっと一緒におる。」
「う、ん……」
「あの二人も大丈夫や。ああ見えてたふやからな。絶対帰ってくる」
そう告げると我慢していたのか、声を出しながら名前ちゃんは泣いた。
どうかこの優しい子をこれ以上悲しませんといて。
この子には笑っていてもらいたいんや。
空をみあげると、一番星が輝き始めていた。
20130823
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