「お疲れ、風丸」
部活終わりに忙しいで校門まで走って向かうと、祐梨が薄く笑いながら俺を迎えてくれた。
寒かっただろう、鼻先と頬が真っ赤に染まっていた。
「ゴメンな、俺が遅かったから…」
「へーき。それに風丸と帰れると思ったら、寒さなんてどーって事ない」
いつものようにニコッと笑う、嬉しいけど、やっぱり無理しているのを感じた。
俺は自分の首に巻いていたマフラーを取り、そっと祐梨の首にマフラーを巻いた。
「これで、少しはあったかくなったか?」
「う、ん…。でも風丸が…」
「部活やって、あったまってるから大丈夫さ」
そう言うと、祐梨遠慮がちにありがとうと言った。
そっと手を差し出すと、祐梨も手を重ね、しっかりと握りしめた。
「あと、少ししかないね…二人で帰れるの」
帰路を進んでいると、祐梨が口を開く。
俺は俯いたまま、あぁ、と頷く事しかできなかった。
そう、祐梨は家庭内の事情でこの冬この雷門町からいなくなる。
その先は気軽に行き交える距離ではなく、中学生の俺達が会うのは容易ではない。
つまり、もう会えないという可能性も無いことはない。
「風丸と、帰れなくなるなんて、考えられない」
ふと祐梨を見ると、寂しげに瞳を震わしていた。
「俺だって、祐梨がいなくなるなんて考えられないさ」
学校、教室、グランド、帰り道…、どこを探しても、祐梨がいない。
日常から祐梨がいなくなるなんて、考えたことなんかなかった。いや、考えたくもなかった。
二人付き合いだしたあの日、そんな事をだれが考えただろうか。
このまま幸せに過ごせる、そう疑っていなかった。
「あ、雪だ…」
祐梨が雪に手を伸ばす。
「綺麗だね、私、雪綺麗で大好き」
「俺も好きだよ」
真っ白で汚れがなくて、優しく綺麗で、祐梨みたいで、
「大好きだ…」
祐梨が、
「本当」
大好きなんだ…。
その時、俺の頬を撫でるように雪が当たった。
「風丸…?」
「どうした?」
「泣いてるの…?」
そんな訳ないだろ、祐梨と帰れて、一緒に初雪を見られて、幸せなはずなのに。
そう思うが、俺の頬は雫の通った後が残っていた。
悲しいのか?
「ッ…!!」
悲しいさ、祐梨がいなくなる、もう一緒に帰る事も、手を握る事も、好きと言う事も、二人で笑いあう事も、出来ないんだ。
本当は、強く強く抱きしめて、行くなと叫んでやりたい。
でもそんな事したら祐梨が困るのわかっているから…。
でも…
「行くな…」
そっと肩を抱き寄せ、離れないように強く強く抱きしめる。
「行かないでくれ、お願いだから、俺の隣から、いなく、なるなよ…」
「かぜ、まるッ…」
どんなに強く抱きしめていても、もう祐梨はいなくなってしまう。
その事がまだ受け入れられない。
初雪が冬を告げるもうすぐ君がいなくなる事を告げる
初雪が、今回ばかりは憎らしよ
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あれ?初風丸夢だから、甘くしようと思ったのに、切なくなってしまった…
しかも、書いてて途中よくわからなくなった←
なんか続くかも…??
23.12.20
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