「私ね、引き取ってもらえる事になったの」
横に座っている祐梨が、急に言った。
「前に会ったんだけどね、とっても優しい人なの」
「そう、なんだ…」
祐梨がお日さま園に来たのはかなり前で、俺とは長い間一緒にいた。
一緒にいるのが当たり前になってて、祐梨がいなくなるなんて考えた事も無かった。
いや、正直考えたくもなかったの方が正しいかもしれない。
でも祐梨の今の言葉で何かが崩れてしまった気がする。
何かはわからない、でも何かが。
「よかったね。その人達なら祐梨を幸せにしてくれるよ。」
「うん。私、親の記憶とかあんまり残ってないからさ。だから嬉しいんだ」
ふんわりと笑う祐梨を見ていたら、胸の奥が締め付けられるような感覚に陥った。
おかしいな、祐梨に家族が出来る、幸せで喜ばしい事のはずなのに。
「でもやっぱり、お日さま園から離れるのは寂しいな…。皆とずっと一緒にいたんだもん」
「そう…、か」
重い沈黙が訪れて、お互いに黙り込んだ。言いたい事はあるはずなのに、何も言えない。
そんな沈黙を破ったのは祐梨だった。
「ヒロト…」
「ん、なんだい」
祐梨の方を向くと、真面目な表情をしてこちらを向いていた。
その雰囲気に俺は思わず息を飲んだ。
「私、ヒロトが好き。ちゃんと、離れる前に伝えたかったの…」
「ッ…」
まっすぐに俺の目を見て言う祐梨が本気なのはわかった。
「俺も、好きだよ…」
揺れそうな意志を抑えるために、ギュッと自分の拳を握った。
「でも、それはお日さま園の家族として、」
偽りはない。
なのに、そう言った時の祐梨の悲しそうな姿を見ていたら、何とも言えない気持ちが襲ってくる。
「そっか、そうだよね…。ゴメンね…変な事言って…」
絞りだすように祐梨は言うと、立ち上がった。
「それじゃあ、行くね」
そう言って離れて行く祐梨の手を握った。
自分でも何故だかわからない、でも、離したくなかった。
「祐梨に家族が出来ても…、俺達お日さま園の事…忘れないでくれないか」
「…、うん。忘れないよ…」そう言われて祐梨の手を離したのはいつの事だったか、もうあれから月日は流れてしまって、もう祐梨はいない。
あれからと言うもの、俺の中には焦燥感がくすぶっていた。
「お日さま園の家族として…か」
本当にそれだけだったんだろうか。
そんな事、自分には言うまでもなくわかってるんだろ。
あの時、ああでも言わないと祐梨を引き止めてしまいそうだった。
せっかく家族が出来るのに行くな、ここに居てくれと、言ってしまうのが怖かった。
祐梨の幸せを…、奪いたくなかった…。
ほんとうは好きでしたなんて、そんな今更言っても、もう君には届かない************
ヒロト初夢(^O^)
ヒロトの口調が迷子すぎる…
title:確かに恋だった
24.3.6
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