「それじゃあ、さようなら」
そう言いながら手を振る蘭丸くんに向かって私も手を振った。
蘭丸君の姿が見えなくなるまで見送った後、私は力無く座り込んだ。
あのあとは蘭丸くんになんかいろいろ聞いてもらった気がするけど、あまり覚えていない。
『悲しい時は、悲しいって言っていいんですよ?』
蘭丸くんの言葉に、何かが解けたかの様に私は寂しかったとかとにかく言った気がする。
そうか、私は寂しかったのか、と改めて実感した。
私のただの戯言のような言葉にも蘭丸くんは返事をしてくれて、ずっと抱きしめてくれていた。
それがとっても安心できて、蘭丸くんの優しさに甘えてしまった。
今思えば恥ずかしい。
後輩に慰められる先輩って…。
思わずため息がでた。絶対蘭丸くんも呆れたんだろうな。
蘭丸くんは優しいから何も言わなかったけど。
しかも家まで送ってもらってしまった。
「迷惑かけすぎた、よね…」
ぽつりと呟きながら立ち上がると、自宅の扉を開いて家へと上がった。
「ただいまぁ…」
って言っても誰も居ないから、返事なんか返ってくるわけでもない。
そう思うと、一人という現実が改めて身に染みる。
そういえば昔、まだ両親が一緒に居たときはただいまって言ったら当たり前のようにお帰りって言葉が返って来ていた。
家には明かりが灯っていて、夜ご飯の出来る匂いが漂っていて、お母さんが笑顔で迎えてくれていた。
お父さんの帰りが早い日は二人で笑いながら迎えてくれていた。
もう、そんな事もないのかな…。
ふと髪を触ると、思い出の詰まったリボンに当たった。
そうだ、さっき蘭丸くんに話しを聞いてもらってる時に話したんだ。
私がこれを今でもし続けているのは、きっと昔の思い出を忘れないため。
そして、もしかしたら昔のように、家族3人で過ごせる日。そんな日がくるんじゃないかという、ささやかな願いがこもっている。
馬鹿馬鹿しいかな、やっぱり。きっともうそんな事考えても。 そう言うと、蘭丸くんはそんな事はないですよ、と優しく言ってくれた。
その言葉はどれだけ私を救ってくれただろう。
心の中の、何か重たいものが取れたかのように軽くなった。
「…、ありがとう蘭丸君。」
明日は謝ってからお礼を言わないとな。
いろいろ迷惑かけちゃったし…。
「それにしても…」
蘭丸くんの事は、可愛いしでもカッコイイ後輩だと思っている。
でも、あの時は…。
一人の男の子の様に、頼もしくて大人のようだった。
だからこそ、甘えてしまった気がする。
変わっていく想い
きっと気のせいだよね、思って
この時は本当の気持ちから目を逸らしていたのかもしれない
********* 久しぶりに更新できて安心(^O^) なのに、蘭丸との絡みが最初だけって、もうなんなんだ←
次回はちゃんと絡みますよ!!
24.4.5
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